このように、オンワード、ゾゾ、タンゴヤ、SADAは、いずれも衣料品に関連する事業を行ってきた会社が、事業再構築でオーダースーツに進出した例で、新規展開の主流となっている。その中で成功をつかみつつあるケースもあれば、ゾゾのように急ぎ過ぎてうまく立ち上がらなかったものも存在する。
オーダースーツの難しさは、顧客1人1人、個別に対応しなければならないので、大資本で一気に展開しても技術が伴わず、なかなかうまく行かないことだ。既製服が、販売員の手八丁口八丁で売れるのは、フィッティングがその場でできて似合うかどうか確かめられるからで、オーダーメイドの場合、売れても顧客に届いた服が体に合ってないとなると、クレームの嵐となってしまう。
「お客様によって違う微妙なフィット感までを考慮してつくるのは難しく、アフターフォローが大切です。オーダースーツはクレームビジネスだと考えています」(前出・佐田氏)。
オーダースーツは今までの紳士服の大量生産・大量販売の考え方では、対処できないビジネスだ。そこに、トップから末端まで身にしみて気づかなければ、紳士服大手の再興は難しいだろう。
加えて新しく、中国で流行する新型コロナウイルスの問題が浮上してきた。アパレル大手・中堅各社は中国に主力工場を持っている。大幅な納期遅れや販売の一時休止に追い込まれる企業も出てくる見通しだ。
image by: 長浜淳之介