新型肺炎で隔離の「クルーズ船」対応で手腕が問われる2人の大臣

 

更に、感染の経路についても同様です。飛沫感染と接触感染だけだということになっていますが、中国の一部からは「エアロゾル感染」があるというような見解が流れています。これは非常に大切な問題です。エアロゾル感染があるのなら、仮にもう少し感染が拡大したら、満員電車の通勤などもってのほかだし、外食やホテルなどの産業は高度な対策を求められてしまいます。

この点に関しては、乗客の方々には申し訳ないのですが、今回のクルーズ船は貴重なケースになります。よく言われているように、船は揺れるのでアチコチに手すりがあり、しかも多くが高齢なので頻繁に手すりにつかまる、だから接触感染が広がりやすいというのは、かなり信用できるストーリーだと思います。

仮にそうであれば、それで全てが説明できるかどうか、徹底的な追跡調査が必要です。その上で、接触感染と飛沫感染だけで、全てが追跡できたとしたら、エアロゾル感染は心配しなくていいということになります。全員に記憶の残っているうちに、徹底的に調査してデータを集めて分析すべきです。

つまり、比較的早期に感染していたAさんという人がある階段の手すりをベタベタ触ったのが、何月何日の何時か特定できたとして、その手すりをその後で触った人を追跡するという作業を徹底して続けるのです。その結果として、感染経路と潜伏期間の特定が100名単位でできれば、これは貴重なデータになります。

その上で、仮にエアロゾル感染はないということになったとして、2番めに大事なのは、乗客、乗員の健康被害を止めることです。処方箋薬の供給は即刻、タオル、リネンの交換も即刻ですが、できれば多角的な理由による健康悪化が進む前に下船させるという措置は必要と思います。

大規模になるので、施設の手配が大変だというのはわかります。ですが、危機なのですから、民間施設の借り上げと公共施設の提供を特例で行って収容すべきです。例えば簡保の資金でできた宿泊施設とか、公務員の共済組合施設とかをまず提供して、足りなければ民間も提供する、とにかく船内の個室に閉じ込めて健康が悪化するようで、万が一重病人が出たら厚労省の責任にされてしまいます。現時点では、そうなった場合に日本政府と日本国のイメージダウンは避けられません。

とにかく、まず不安感情の元になる「潜伏期間、感染経路」の問題をクリアーにして、風評を抑え込み、迅速に乗員・乗客を地上の民間・公共施設に収容して健康被害を防止すべきです。

いやいや、クルーズの客というのは、基本的に富裕層だから、そこまでしなくてもいいという世論もあるのかもしれません。ですが、現状はそんなことを言っている場合ではありません。

日本のような高度に教育を受けた巨大人口を抱える先進国が、観光立国などというのは、本来は全く誤りでチャンチャラおかしいのですが、残念ながら観光業に依存する経済というのは否定できません。

仮にそうであれば、日本は「クルーズ船の寄港地としては最悪」というイメージがついてしまうのは、何としても避けなくてはなりません。IRを潰してプラス要因が消えるのならまだしも、現在、日本のGDPに大きく貢献しているクルーズ客が来なくなったら、しかも欧米系の長期滞在型のお客に徹底的に嫌われたらどうなるか、ここが踏ん張りどころだと思います。

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