台湾との差が歴然。新型肺炎でも馬脚をあらわした後手の安倍政権

 

蔡英文の果断な措置への称賛

この安倍政権の体たらくとは対照的に、最初からキビキビと対処して感染を最小限に防いで国際社会から称賛を浴びているのが、台湾の蔡英文総統である。

まずは次のクロニクルを見て頂きたい。これは、7日付朝日「台湾コロナ政策、奏功」、藤重太「台湾の新型コロナ責任者が国民の圧倒的支持を集めるワケ」(プレジデント・オンライン1日付)、黄文雄「新型コロナへの対処法は台湾に学べ」(まぐまぐ!4日付)などを参考に本誌がまとめたものである。

CHRONICLE《新型コロナウイルスへの台湾の対応》

  • 12/31 衛生福利部が最初の注意喚起。武漢からの航空便への検疫官の機内立ち入り検査はじめ空港などでの入国検疫強化を指示
  • 01/02 専門家などによる「台湾衛生福利部伝染病予防治療諮問会」の「旧正月春節インフルエンザ対応整備会議」で、武漢の肺炎についての対策を討論。医師の診察時のN95マスク装着の徹底、入国検疫の再強化と帰国後10日間の経過観察、旅行経歴の告知の徹底などが話し合われ、即日実行
  • 01/05 陳時中=衛生福利部長が「中国原因不明肺炎疫病情報専門家諮問会議」を召集、経過観察を10日から14日に延長
  • 01/06 台湾行政院が中国での正確な情報を把握するための調査体制強化を指示
  • 01/07 武漢地区の危険レベルを1(注意/Watch=一般的予防措置の遵守)に上げた
  • 01/08 すべての国際線と中国・厦門、アモイ、泉州、福州などの船舶の往来についても警戒レベルを上げる決定。「12/31~01/08の武漢地区からの帰国便=13便、帰国者の検査人数=1,193人、08日までの感染者=0」と国民に明瞭に情報開示
  • 01/11 「台湾で感染者が見つかった」とのSNS上のデマに対して当局が「虚偽」と明言、デマを流した者は「伝染病予防治療法」あるいは「社会秩序維持保護法」で処罰されると警告
  • 01/16 武漢からタイに行った中国人女性が陽性反応で隔離されたためタイから台湾への帰国者・入国者への特別検疫体制を検討したが、この時点では見送りと発表。同日、武漢から日本に帰国した在日中国人男性が陽性と判明。このため衛生福利部がタイと神奈川の事例を分析し「ヒトからヒトへの伝染がありうる」と判断、「法定感染症」に指定し、武漢の危険レベルを2(警示/Alert=防護措置の強化)へ引き上げ
  • 01/20 「厳重特殊伝染性肺炎中央伝染病指揮センター」を正式に立ち上げ、全省庁と地方政府の横断的な連携で伝染病対策に取り組む体制を整えたと発表
  • 01/21 武漢から帰台した50代女性が空港検疫で「症状あり」とされ、搬送先の病院で陽性と判定(初感染者)。機内でその女性と接触があったと見られる46名も追跡調査し全員が陰性と確定。同日、危険レベルを3(警告/Warning)に引き上げ。
  • 01/22 蔡英文総統が「国家安全ハイレベル会議」を招集
  • 01/23 「中央伝染病指揮センター」を陳部長の直接指揮下に
  • 01/24 同センターが行政院、経済部と協力してマスクの輸出禁止、高値転売禁止措置。また中国への団体旅行、中国からの団体旅行受入を中止
  • 01/25 湖北省からの中国人の来台を禁止
  • 01/27 台湾政府が武漢にチャーター機派遣を打診開始するが難航
  • 02/02 「01/下旬~02/10までの小中高の正月休みを延長して02/24までとする」決定。同時に小学生の世話が必要な保護者のために看護休暇を申請できるようにした
  • 02/03 武漢からチャーター機で247人が台北に到着。完全隔離で14日間観察され、感染者1人
  • 02/06 中国在住の中国人の入国を全面禁止に。マスクを買うのに健康保険IDで本人確認する仕組みを導入
  • 02/24 世論調査で蔡英文総統の支持率が前月より11.8pアップの68.5%に

まず第1に、初動の早さに驚く。12月12日に武漢で発症例が見つかって、武漢市当局も中国政府も何が何だか分からず、SNSに書き込まれた救済の訴えを「デマ」と断定して市民8人を警察が処罰したりしていた。しかしその段階からすでに台湾の厚生労働省に当たる「衛生福利部」傘下の「疾病管制署=CDC」は、この動向をウォッチしていたに違いなく、12月30日に至って武漢市当局がようやく「原因不明の肺炎患者が見つかった」ことを公式に認めるや、即、翌31日に衛生福利部が最初の「注意喚起」を発し、専門家による検討を経て1月2日までに入国検疫強化、医師の診察時マスク装着の徹底、帰国後10日間の経過観察、旅行経歴の告知の徹底など、取り敢えずの緊急対策を矢継ぎ早に打ち出している。

この時、肝心の中国は、眼科医の李文亮が感染拡大の危険を微信に書き込んだのをデマだとして、警察が3日、彼を訓戒処分にしたりしていた。中国本体よりも遙かに早く、台湾が危機の本質を見通して素早く最大限の対応に打って出ているのが凄い。本当は政府というのはこういうものなのですね。裏返せば、日本には政府らしきものは存在しなかったということだ。日本政府が第1回の専門家会議を開いたのは、何と、台湾に比べて1カ月半も遅れた2月16日のことで、しかも安倍首相はそれに顔だけ出して中身は聞かず(聞いても自分の頭では理解できないと思ったのだろうが)10分ほど居て、自宅に帰ってしまった(本誌No.1,035「4月末までに新型肺炎の完全収束がなければ東京五輪は絶望的な訳」)。

台湾がとりわけ優れていたのは、1月中旬、中国もWHOも、従ってまた日本も、まだ「ヒトからヒトへの感染はない」と言っている段階で「ありうる」と独自に判断して16日に警戒レベルを上げ、「法定感染症」に指定していることである。中国が「ヒト→ヒト感染」を認め「断固抑え込む」と姿勢を一変させたのは4日遅れの20日。日本がこれを「指定感染症」としたのはさらに8日遅れの1月28日、それに伴って政府に対策本部を立ち上げたのは10日も遅れた30日である。

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