やってる感の末路。東京五輪が延期でなく「中止」するしかない訳

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3月23日、東京五輪延期を容認する姿勢を初めて示した安倍首相。さらに首相は「中止という選択肢もない」と述べましたが、五輪という大会の特質上、延期を厳しいとする意見も数多く聞かれます。識者は東京五輪の今後をどう見るのでしょうか。ジャーナリストの高野孟さんは自身のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で今回、「延期は事実上不可能」としてその理由を記すとともに、初動の怠慢から新型コロナウイルスの蔓延を招いてしまった安倍首相を厳しく批判しています。

※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年3月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

もはや「中止」するしかなくない東京五輪──安倍政権の命運もそこまでか?

細川護熙元首相は3月21日付毎日新聞での対談でこう言っている。「〔安倍〕首相は、国内で患者が発生してから1カ月半近く、厚生労働省に対応を任せっぱなしだった。一転してドタバタと政治決断をしたが、小中高校の一斉休校要請は専門家の意見を聞いていないし、各省庁や地方自治体への根回し不足の感も否めない。首相の『やっている感』のために、いろんなことが犠牲になった。……東京オリンピックについても、『それどころではない』というのが多くの国民の受け止め方だろう」と。

さすが細川で、今の安倍政権の有様を簡潔・的確に要約している。

第1に安倍晋三首相が、1月15日に国内で初めて感染者が出てからも、この問題を自分が先頭になって立ち向かうべき危機的な事態と受け止めていなかったことは、疑いようもないことで、その証拠の1つは、その日から3月8日までの53日間のうち3分の2に当たる35日、夜に知人、マスコミ幹部、財界人、側近やお気に入りの議員などと会食や懇親会を設営して美酒美食に溺れている事実である。国会でそれを問われて、「宴会をやっているわけではなく、さまざまな方と意見交換を行っている。何が悪いのか」と開き直ったが、人の命に関わるような事柄で意見交換するには酒抜きでするのが当たり前だろう。

この間、2月13日には初の死者が出、その時点で友党の公明党から首相が自ら記者会見して現状などを説明するよう要望があったが、それを無視して、結局、2月29日になって初めて記者会見を開いた。なので、1月15日からこの会見までの1カ月半近く、安倍首相が自らがこの事態に立ち向かう気概を見せることはなかったことは確かである。

もはや「記者会見恐怖症」なのか

第2に、しかもその会見は、細川が言うように「一転してドタバタと」27日になって唐突な一斉休校を打ち出して「やっている感」を演出しようとしたのが余りに評判が悪かったため、その弁解のために開かざるを得なくなったもので、後ろめたさのためだろう、質問もロクに受け付けずに打ち切って、家へ帰ってしまった。

専門家会議にも諮らず、文科省にも知らせず、政権の柱であるはずの菅義偉官房長官や盟友とされる麻生太郎副総理にも相談せずに、こんな一見過激な案を打ち出して世間を驚かせようというのは、安倍首相を操る君側の奸=今井尚哉首相補佐官の小賢しい常套手段だが、これこそまさに「強力なリーダーシップ」の履き違えというもので、社会に大安心ではなく大混乱を生み出しただけに終わった。

そこで3月20日には、春休みまでとしていた休校要請を延長せず各校の判断に任せること、大規模イベントの開催可否も主催者の判断に委ねることなどの緩和方針を打ち出した。これは2月27日の政府方針の大きな変更に当たるので、事前には「首相が会見することになると思う」と政府高官が語っていたにもかかわらず、それは取り止めとなり、新型コロナウイルス対策本部の会合で官僚が書いた文章を読み上げその動画を官邸HPにアップするというだけの発表形式に止めた。

東京新聞21日付の「首相会見なし」という記事によると、「森友」問題で文書改竄を強要されて自殺に追い込まれた財務省末端官僚の妻が国と佐川宣寿元国税庁長官などを提訴したため、「記者会見だとコロナと関係ないことも聞かれる」として記者会見を回避したという。

本誌が前にも書いているように、こういう非常事態で何よりも大事なのは、国民の政府に対する信頼で、それを培うのはトップの国民に対する説得力である。そのための最大のツールは記者会見であるはずで、その中心テーマである新型コロナウイルス対策について自信を以て語ることに不安があるばかりでなく、他の政権スキャンダルについても訊かれるのが嫌だから記者会見を回避するというのは、「記者会見恐怖症」で、これはもう病(やまい)の域である。

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