軍事アナリストが提案。チャーターによる野戦病院型の「病院船」

 

チャーター船の候補は次の3船種でした。
●RO-ROモジュール船(1万313トン)
船形は平ら。前方に船橋(ブリッジ)があるが、海自のヘリ護衛艦「ひゅうが」の吃水を下げたような船形で、ヘリを発着させるスペースを確保できるプラントやガントリークレーンなど重量物を運ぶ用途だが、コンテナも搭載できる。貨物をおろしたあとは船内を病室に使える。本来RO-RO船である(岸壁から車両が自走して船内に出入りする)。貨物は後部からランプウエーを渡して出し入れする。チャーター可能期間は現時点で6カ月。

●新多目的重量物船(1万9400トン)
大型クレーン(150トン)3基を装備しており、クレーンは1基300 トンまでの重量物を運べる。ヘリは運用できない(クレーンが邪魔)。海自の大型ホバークラフト(LCAC)も運べる。甲板にコンテナを搭載できる。船体内部に何層かの中敷を入れてRO-RO船にできる。貨物をおろしたあとは船内を病室に使える。チャーター可能期間は現時点で3~4カ月。

●新多目的船(多用途コンテナ船)(1万7500トン)
クレーン(40トン)2基を装備。ヘリを運用できない(クレーンが邪魔)。本来コンテナ船である。船体内部に何層かの中敷を入れてRO-RO船にできる。貨物をおろしたあとは船内を病室に使える。チャーター可能期間は現時点で3~4カ月。フィリピン、マレーシアの泊地にコールド・レイアップ(無人)で保管されている。

ちなみに、RO-RO船(roll-on/roll-off ship)は、フェリーのようにランプ(岸壁と船の間に渡す収納可能な橋)を備え、トレーラーなどの車両を収納する車両甲板を持つ貨物船のことです。一方のLO-LO(lift-on/lift-off ship)船のほうは、船舶に装備されたデリック・クレーンやクレーンで貨物を吊って揚げ下ろしする方式の船です。

以上の3船種をもとに検討した結果、理想的なのはRO-ROモジュール船と新多目的重量物船を1隻ずつ派遣し、それぞれの特色を活かした運用をすることだが、1隻だけ派遣する場合は第1候補にRO-ROモジュール船、第2候補として新多目的重量物船を考えるのが、「病院船」としては望ましいのではないかということになりました。

具体的な運用について、メモは次のように記しています。

  • 準備期間については、2010年2月中旬の時点で発注しても、3タイプとも4月からの稼働となる。
  • 政府側も、救援物資、病院システム、人員の準備に4月まで掛かる。
  • 4月出港で準備すれば、5月上旬にはハイチでの活動開始が可能。
  • ハイチは6月からハリケーンの季節だが、船は暴風圏外に避難できるメリットあり。
  • 法律の関係で、目的地まで乗船できる「船客」は12人以内となっており、医療スタッフなどは航空機で現地入りし、合流することになる。
  • チャーター料は1日あたり1隻300万円が目安となる。

これまでご紹介してきたような貨物船に医療モジュールコンテナを積むものより、災害救援を主眼としている関係で「野戦病院」のようなイメージではありますが、迅速な投入が可能というメリットには捨てがたい魅力があります。このようなチャーター船を病院船として使う場合、基本的な設備・装備を国際緊急援助隊と一緒に準備しておけばよいだけです。

頭の固い病院船の議論をほぐすのに、ちょっと余計なことを言ってみました(笑)。(小川和久)

image by: Robert V Schwemmer / shutterstock

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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