コロナ重症患者の救世主となるか。中外製薬「アクテムラ」の実力

arata20200416
 

富士フイルム富山化学が開発した「アビガン」が、新型コロナウイルス感染症の軽症者に対して効果を発揮するとして世界中から注目を集めていますが、同じく日本発のある薬が、重症患者の救世主となる可能性が出てきました。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、ノーベル賞受賞者の本庶佑氏が名をあげた抗体医薬品「アクテムラ」の作用システムを紹介しその積極的な臨床試験を訴えるとともに、相変わらず正しいリーダーシップを発揮できない安倍総理に対して批判的な見方を示しています。

アクテムラはコロナ重症患者治療の切り札になるか

ノーベル賞受賞者の本庶佑・京大名誉教授は、風格ある紳士ゆえ、あからさまに次のようなことは言わない。

「“アベノマスク”配布に466億円もかける金があるのなら、新型コロナウイルスの治療薬研究に投入してもらいたい」

しかし、本音は上記に近いのではないか。4月11日朝の日テレ系報道番組「ウェークアップ!ぷらす」に生出演した本庶氏の以下の発言を聞いていて、そう思った。

「安倍さんが言う100兆円のうち、真水がどれくらいかわかりませんが、100億でも病態解明と治療薬につながる研究に出していただければ、非常に大きな結果が出てくると信じております」

「過去にない、強大な規模」と安倍首相が大口をたたいた総額108兆円の緊急経済対策。税金や社会保険料の支払い猶予まで含めて金額を水増ししているが、GDPに寄与する「真水」は20兆円程度ともいわれる。そのうち100億円でいいから、治療研究にまわしてほしいと訴えるのだ。もっともなことではないか。

治療薬研究に関して、本庶氏は一つの薬名をあげた。「アクテムラ」(一般名:トシリズマブ)。中外製薬が創薬した国産初の抗体医薬品で、関節リウマチをはじめ6つの病気の治療薬として承認されているものだ。

「アビガン」は軽症段階で投与すれば効果が出るといわれるのに対し、「アクテムラ」は重症患者の治療に使えるのではないかと期待が高まっている。

中外製薬は、4月8日に新型コロナウイルス肺炎の薬として治験をはじめる届けを出したが、厚労省の動きはというと、いつものことながら、鈍い。

本庶氏はこう言う。「アクテムラとか、日本で開発されてますからね。そういうものを、もっともっと臨床の現場で使ってみろ、というような指針を出さないといけない」

海外では、重症新型コロナ肺炎の入院患者約330例を対象に臨床試験の開始を中外製薬の親会社、ロシュ社(スイス)が3月19日に発表している。日本も急がねばならない。

「アクテムラ」はなぜ期待できるのだろうか。どうやら「サイトカインストーム」がキーワードのようだ。

「(新型コロナで)死に直接かかわるのは、サイトカインストームという非常に大きな免疫反応の変化です。なぜ起こるのかがよくわかっていないので、世界中の研究者が問題にしている。そこを実地でもやりながら病態を解明して、短期間でこれを終息させる。これが一番重要だと思います」

実地でやるとは、具体的には「アクテムラ」の臨床試験のことをさすのだろう。

サイトカインストームを起こし、突如として重篤な肺炎に陥るケースが新型コロナではしばしば見られる。ウイルスを排除するために分泌されたサイトカインが、過剰な免疫反応を起こすのだ。なぜそうなるのかを解明するためにも、「アクテムラ」などを積極的に臨床で使えるよう、厚労省が指針を示すべきだという。

病原体への免疫系の攻撃は、白血球の好中球やマクロファージなどが飲み込んだり、キラーT細胞が宿主細胞を破壊したり、抗体が病原体を不活化させたりしておこなわれる。免疫の活性化と抑制に、重要な役割を果たしているのが、サイトカインと呼ばれる生理活性蛋白質だ。

サイトカインの一種である「インターロイキン6」(IL-6)が、自分の免疫に自分の体を攻撃される自己免疫疾患の原因に関わっていることを発見した大阪大学の研究チームと中外製薬が共同研究して生まれたのが、国内初の抗体医薬品「アクテムラ」である。

IL-6の作用を妨げる働きを持つため、炎症反応が暴走するサイトカインストームから生命を救うのに効果があるのではないかと、期待されている。

新型コロナウイルスに感染し、呼吸困難になったとき、今のところ、人工呼吸器、または、人工肺とポンプの体外循環回路による「ECMO」で酸素を補給し、患者の自力による復活を願うしか手立てはない。

いわば、丸腰で戦っているのが実態だ。ワクチンができれば、その投与で抵抗力が備わるが、コロナウイルスのワクチンは簡単にできないと本庶氏は指摘する。それでは新型コロナウイルス流行の終息がいつになるか全く見通せない。だからこそ、一刻も早く有効な治療法を見つけるべきであり、そこに政府が力を入れるべきだと本庶氏は説く。

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