新型コロナウイルス流行の影響で世界的に経済活動が停滞する中、我が国の3月の貿易収支が前年同月比99%減となり、各所に衝撃を与えています。日本経済はこのまま未知のウイルスに破壊されてしまうのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、「目先の利益に惑わされず、苦しくても正しい行動をするべき」として、その具体的な取り組み方を記しています。
日本の貿易黒字、前年同期比【99%減】これからどうなる?
先日、NY原油先物が史上初めて「マイナス40ドルになった」という話をしました。詳細はこちら。
● ここにもコロナの影響。NY原油先物が史上初マイナスになった理由
アメリカでは、失業保険申請者の数が2,600万人(!)になったとか。本当に驚くべき状況になっています。
日本はどうでしょうか?私も、基本に家にいます。しかし、当たり前ですが、食料品は買いにいきます。その時、町の様子をじっくり観察しています。これも当たり前ですが、閉まっているお店だらけですね。マスクして、ソーシャルディスタンスを保ちながら、人と話をすることもあります。
開いている店でも、状況は深刻みたいです。ある花屋のおばさんは、「昨日は一人もお客さんが来なかった。店を開いてからはじめての経験だ」と泣きそうな顔をしていました。
さて、日本経済、マクロではどうなっているのでしょうか?先日は、こんな情報が出ていました。
3月の貿易収支、49億円の黒字 前年同月比99%減 新型コロナが輸出に影響
4/20(月)11:04配信
【AFP=時事】財務省が20日発表した日本の3月の貿易収支は49億円の黒字となり、前年同月比で99%減少した。主要貿易相手国への輸出が新型コロナウイルスの影響を受け、貿易収支は前年同月の5,170億円の1%にも満たなかった。
日本の貿易黒字は3月期、前年同時期比で99%減少したそうです。ショッキングに思える数字ですが。実をいうと、日本の貿易収支は、原油価格が高くなると赤字になることもあります。それより、気になるのは、こちら。
輸出額は米国向けが16.5%、中国向けが8.7%、欧州向けが11.1%減り、全体で11.7%減となった。
(同上)
これって、かなり衝撃的な数字ではないでしょうか?アメリカ、欧州、中国の順で需要が激減していることの反映なのでしょう。
輸入はどうなのでしょうか?財務省の統計を見ると、前年同期比5%減。対アメリカは、1.3%増加。対中国は、4.5%減。対EUは、9.7%減。輸出ほどではないですが、こちらも減少しています。こちらは日本国内の需要を反映しているのでしょう。
3月は、緊急事態宣言が出される前ですから、まだ余裕がありました。「花見で混雑している」と報じられていたぐらいですから。3月の輸出は、前年同期比で、11.7%減少。輸入は、5%減少。残念ですが、これはまだ「序の口」ですね。
4月7日に緊急事態宣言が出された。それで、4月は経済が本格的に止まっています。欧米も止まっているので、輸出、輸入ともさらに大きく落ち込むことでしょう
この現象は、「新型コロナウイルスに感染したくないから、皆家にいて動かないこと」が原因です。新型コロナ災が終息して、人が動き始めれば回復しはじめるでしょう。回復まで、どのくらいかかるのでしょうか?それは、私たちの行動にかかっています。がまんできず、パチンコにいって集団感染すれば、長引くでしょう。
できる人は、家にいる。仕事にいく人は、マスクをし、ソーシャルディスタンスを意識し、手を頻繁に洗う。国民が一つになって取り組めば、2か月ぐらいで越えていけるでしょう。長引けば、感染者が激増するだけでなく、経済的痛みもどんどん大きくなっていきます。
皆さん、思い出してください。日本政府は、「中国人観光客が落とす金」が欲しくて、中国全土からの渡航禁止をなかなか決断できませんでした。結果、「小銭」は得たかもしれませんが、日本経済全体を大きな危機に突き落とす結果になりました。政府は、「小銭」を得ようとして、「超大金」を失うことになったのです。もちろん、被害にあっているのは、私たち国民です。
「目先の利益」に惑わされず、苦しくても「正しい行動」をすること。今必要なのは、
- 新型コロナ災をできる限り短期間で克服すること
- その上で景気を回復させること
まず1.で、その次が2.です。まず命で、その次が金です。このことがわかっている、台湾、ニュージーランド、ドイツなどは、新型コロナ災克服に成功しています。
「命も大事、金も大事」と中途半端に指導者がフラフラしている国では、いつまでたっても新型コロナ災を克服できません。
image by: 首相官邸