4.国内生産再構築をアベノミクスの成長戦略に
アベノマスクに押され、アベノミクスという言葉も聞かれなくなりました。アベノミクスは3本の矢で構成されています。第1の矢が、「大胆な金融政策」。異次元金融緩和が行われましたが、残念ながらデフレは解消されていません。
第2の矢が「機動的な財政政策」。経済対策予算を組むといいながら、緊縮財政は変わらず、しかも、消費増税を行ったために、需要を創造することはできませんでした。
第3の矢は、「民間投資を喚起する成長戦略」ですが、規制緩和というむしろ供給を増やす戦略であり、目玉となる政策もありませんでした。現在に至るまで、成長戦略は見えていません。
国内製造業再構築の政策は、大幅な需要創造になります。海外依存の製造業を安全保障政策の一環として日本国内に戻すことは、大幅な設備投資につながりますし、産業全体の構造が変わるので、大きな資金需要にもつながります。これにより、ようやく流通する資金量が増えるでしょう。
また、グローバルな製造業ではなく、日本のアイデンティティに根ざし、日本の風土に対応した製品が増えれば、価格競争ではなく、文化競争力がつくと思います。デザイナーやクリエイターの活躍する場が広がり、世界に日本の美意識やデザインを広く訴求することになるでしょう。
これは大きな成長戦略になり得ます。アベノミクスは建前はデフレ克服ですが、具体的にはインフレ克服の政策を続けたために、効果が出ませんでした。むしろ、トランプノミクスの要素を取り入れ、減税とインフラ投資、保護主義的な国内製造業の回帰を進めることで、結果的に成長戦略を達成できるはずです。
新型コロナ禍により、世界的にグローバリズムが見直されます。このピンチをチャンスに変えることができれば、日本は新たな時代の勝者になると確信しています。
■編集後記「締めの都々逸」
「中国製より 日本で作る それが経済成長に」
少し前まで、グローバリズムを推進することか経済成長だと信じていたのは、現実を直視せず、理論に振り回されていたためでした。新型コロナウイルス禍で、現実を見直す時間ができました。そして「どうもおかしい」と思うようになりました。結果的に中国生産を増やしたことは、日本のプラスにならなかったからです。そして、MMTを含む新しい経済学について勉強してみました。
そこで初めて、トランプ大統領の政策の意義が見えてきました。自分の考えが間違っていたことも分かりました。国内生産の再構築が実現すればいいなと思います。本当に日本の経済問題のほとんどが解決するでしょう。(坂口昌章)
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