五輪など無理。日本が秋に襲われる「コロナ第2波」の深刻な事態

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2021年に延期された東京五輪の「中止の可能性」にIOC調整委員長が言及したというニュースが複数のメディアで報じられ、物議を醸しています。以前掲載の「森会長、東京五輪の再延期は『絶対ない』強調にネット疑問の声」では再延期すら全否定した日本サイドですが、「中止」はあり得るのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』ではジャーナリストの高野孟さんが、そもそも五輪を延期に追いやった新型コロナウイルスの今後の流行規模と五輪の行く末を、海外を含めた様々な報道を元に考察しています。

※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年5月25日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

「10月」という壁を乗り越えられそうにない東京五輪――IOCから示された厳しい判断

東京五輪の準備作業を統括する国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ調整委員長は、コロナ禍が地球上から一掃されない限り東京五輪の開催はあり得ないと述べ、その判断の山場は「今年10月頃になる」との認識を示した(5月21日付豪紙オーストラリアン)。日本の各紙はやや遠慮がちに表現を和らげているが、同紙の見出しは「東京五輪は決して実現しないだろう」である。

コーツは、新型コロナウイルスの感染者が急増するブラジルを例にあげて、数少ない先進国などを別にすると多くの国にとってこの事態に対処するのは困難で、またワクチンは仮に出来ていたとしても世界中に行き渡るのは簡単ではないため、「206カ国・地域から1万1,000人の選手のほか、2万人の報道関係者、6万人のボランティアらが集まる五輪開催は現実的に難しい」と指摘。さらにその上で、彼は「東京五輪が開催できるとすれば2021年限りで、再延期はない」とも断言した。

同日、IOCのトーマス・バッハ会長も英BBCに対し「21年開催が無理になった場合は中止」との見通しを示し、その理由として「日本の組織委が永久に3,000人や5,000人も雇用を続けることはできないことは理解できる。また毎年、世界中のスポーツ日程を変更することはできないし、アスリートを不確実な状況にとどめてはおけない」などを挙げた。

橋本聖子五輪相や日本組織委は「そんな話は聞いていない」の一点張りだが、IOC側が言い出していることは極めて現実的で、結局日本側もそれに従わなければならないことになるだろう。

今秋に第2の大波が?

コーツは、決断の時期がなぜ今年の10月なのかの理由を明示していない。しかし、今は次第に沈静化しつつあるように見えるコロナ禍が今後も世界各地で小さな波を繰り返しながら、この秋頃には大きな第2波となって再び全世界を襲うのではないかという観測は、多くの専門家の間で共有されている。ニューヨーク・タイムズの常連コラムニスト=ニコラス・クリストフは、23日付同紙オピニオン欄の「忘れるな、コロナウイルスはまだ謎なのだ」と題した論説で、「多くの疫病学者が深く懸念するのは、われわれがこれまでに耐えてきたものよりもっと過酷な、大きな第2の波が今秋にやってくることである」と指摘している。おそらくコーツは、そのような専門家の間の常識とも言える識見に従ったのだろう。

クリストフは言う。

コロナ禍をめぐる報道で奇妙なのは、非専門家ほど極端な楽観的な見通しを語る一方で、疫病学者たちは本当のところこれについてはまだほとんど何も分かっていないのだと言っていることである。

UCLAのアンヌ・リモイン伝染病学教授は「これは新型ウイルスで、人類にとって新しいものであって、何が起きるか誰にも分からない」と言っている。そのような疫学的な慎重さこそ、公の議論に浸透させるべきである。

あれこれのワクチン開発話に飛びついてはならない。我々が、安全で効果があると証明されたワクチンを得たとしても、それをとてつもない規模で――とりわけ1人1回以上の服用が必要ということになればなおさら――製造しなければならない。仮に十分なワクチンが出来たとしても、今度は注射器、針、薬品を入れるガラスビンが足りるのかということになる。米国のワクチン需要に見合うガラスの薬ビンを製造するのに、2年間はかかるだろう……。

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