46年売れ続ける。どうってことない味の「かにぱん」が人気な理由

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1974年の登場以来、実に46年もの間日本人に愛され続けてきた「かにぱん」。味に大きな特徴があるわけでもないプレーンなこのパンは、なぜここまでの人気を誇っているのでしょうか。繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんが、自身の無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』でその秘密を探ります。

カタチを変えると、売れる!

「かにぱん」をご存知でしょうか。ほのかな甘みと、ちょっと固めで独特の食感をした、パンのロングセラーです。1974年に誕生しています。

発売当初は、うさぎやコアラ、パンダ、タコなど、他のカタチのものもあったようですが、食べやすいカタチであった「かに」だけに人気が集中したので、かにに絞って販売を続けました。

ハッキリ言うと、“どうってことのない味”です。特に美味しいわけでも、食感が良いわけでもありません。どちらかと言うと、ボソボソした感じで、個人的にはあまり好きではありません。しかし、売れ続けているのです。なぜでしょうか。

その答えは、あのカタチにあったのです。ツメの部分、足の部分が、ちぎって食べるのに、ちょうど良い大きさなのです。また、子どもは遊び食いするもので、別のカタチに変形させて、遊んでいるようです。

このパンは、クリームも餡も何も入っていない上、味としてはごく普通の、特徴が無いパンです。特徴が無いので、「飽きない」とも言えますが。

もし、丸いだけ、四角いだけのパンなら、ここまで売れ続けることはありませんでした。「かにのカタチ」たったこれだけのことなのです。ありふれたものも、カタチに特徴があるだけで売れる、ということです。

品質を変えることは、非常に難しいものですが、カタチを変えるのは、容易です。

残り物は、お客さまに差し上げろ!

昔、パン屋さんでは、食パンの耳を無料でお客さまに差し上げたり、10円、20円で売っていました。貧乏な学生などは、これに助けられたものです。でも、そんなお店は少なくなりました。もう、パンの耳など、置いていません。置いているお店でも、他のものを買った人でないと、貰えないようになりました。最近は、パン粉にして、揚げ物屋さんに売ったり、店頭に並べたりしています。

昔は、そんな“セコい”店主はいませんでした。ご時世で仕方がないのかもしれませんが。誰かの役に立とうとする「心」がありました。

豆腐の残りでもある「おから(卯の花)」も安く売るお店がなくなり、非常に高級なものになってしまいました。産業廃棄物で処理費をかけるくらいなら、無料で配っても良いと思いますが。

こうしたお店の店主は、決まって、こう考えています。「タダであげていると、そればかりをアテにされて、他のものが売れなくなる」と。厳しい世の中ですから、貰えるものだけ貰う、という人もいることは確かです。しかし、何か間違っていませんか。買わずに貰うだけの人も、将来はお客さまになっていただけるかもしれないのです。

サービスは、社会への奉仕です。喜んでいただけるのなら、セコいことをするより、差し上げた方が良いのでは。

ロンドンにあるチーズショップの話です。ここでは、パンも売っているのですが、残ったパンを閉店後、ビニール袋に入れて、店頭に吊るしておきます。欲しい人に、無料で持って行ってもらうためです。パンは、次の日になると固くなるので、売るわけにはいかないからです。

この「心」が嬉しいですね。お客さまは、ちゃんと見ています。そんなお店になりたいものです。

image by: 三立製菓「かにぱん」ブランドサイト

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なぜ、人はモノを買いたくなるのか。欲しいという感情は、どこから生まれるのか。消費行動における人の心理を知れば、売れるモノが見えてくる。売り方がわかる。小手先のテクニックなど、いらない。人を研究すれば、やるべきことはすべてわかる。

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【著者】 佐藤きよあき(繁盛戦略コンサルタント) 【発行周期】 週刊

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