今も植民地のまま。なぜ日米地位協定は60年も改定されないのか?

 

日米地位協定については、私自身も面白い思い出があります。2009年7月1日、那覇市のパレット市民劇場で行われた日本JC主催の「日米地位協定を考えるJCフォーラム」で講演したときのことです。講演後のパネルディスカッションの相方は、当時、米国の沖縄総領事だったケビン・メア氏。普天間問題について米国側の最強硬派として怖れられていた人物です。

私は、「日米地位協定の改定は可能か」という演題で基調講演し、最も望ましい解決策を描くことで日米関係の信頼性を高めるべきだと問題提起し、在日米軍基地のあり方をメア氏に問いかけてみました。私が、旧西ドイツの米軍基地には西ドイツ政府の許可だけで入ることができた経験を述べたところ、なんとメア氏は「アメリカと西ドイツの共同使用施設だからではないか」と答えたのです。

そこで、三沢基地など日本の共同使用施設の場合、日本政府の許可は不要な一方、米軍側の許可が必要だと指摘すると、答えはありませんでした。メア氏が米軍基地の実態について知らないことが明らかになった瞬間でした。このメア氏に、日本側は普天間問題でも押しまくられてきたのです。

なぜ、こんなことになるのか。それは、日本の担当者が安全保障問題について無知で、外国との交渉能力を備えていないからにほかなりません。キャリア官僚を教え子とする大学の先生方が無知、その先生に教わった政治家、ジャーナリスト、経済人も無知とあっては、絶望的とさえ言えます。

2015年5月27日、いまはZホールディングスのCEOになっている川邊健太郎さんがYahoo!の副社長だったころ、私を勉強会に呼んでくれました。そこで驚かされたのは、川邊さんの友人だという外務省の日米地位協定室長が日米同盟にまったく無知で、米国に守られている日本は何も言えないというレベルに終始していたのです。むろん、日米同盟の実態を調べたことはおろか、米国にとって日米同盟が死活的に重要で、日本の離反を米国が怖れていることなど考えたこともないのは明らかでした。

キャリア官僚を有り難がり、専門家だと錯覚して丸投げにしてきた政治家の皆さん、キャリア官僚の意向を忖度し、すり寄ってきた大学教授とマスコミの皆さん、そろそろ目を覚ましてもよいのではないでしょうか。私とメア氏の協議の様子は拙著『フテンマ戦記』(文藝春秋)の第4章に詳しく書いてありますので、参考にしていただければ幸いです。(小川和久)

image by:EQRoy / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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