1つは、例えば中国との冷戦がエスカレートした場合に、管理された軍拡競争をやって、自国の防衛産業を潤すという目的です。勿論、軍拡というのは公共事業の中ではかなり筋の悪いもので、調子に乗ってやると電子部品などの調達が同盟国間に限定されてしまい、製造業軽視を続けてきた日本としては、かなり苦しくなると思います。また、民生用の小型ジェットを作っても上手く行かない中で、防衛装備を国内産業として育成したとしても、限度があると思います。そうした副作用や弊害も分かった上で、とにかく管理された軍拡競争へ進む誘惑はあるのだと思います。
2つ目は、日本や韓国における駐留米軍引き上げのトレンドが、トランプ政権の一過性のものではないという読みです。とにかく、トランプがギャーギャー騒いだために、アメリカの中では右派も左派も含めて、日本や韓国の防衛についてはもっと自分で負担してもらいたい、そんなセンチメントが渦巻いています。これに対抗する策として「あんまり構ってくれないと自主防衛に進むぞ」というメッセージを出しておけば、米国もそんなに無茶なことはしないだろう、そんな計算があるのかもしれません。
3つ目は、河野太郎氏(茂木敏充氏も)への牽制です。防衛族という人々は、長い間日本のエスタブリッシュメントから、悪の権化のように悪口を言われてきました。そんなことで落ち込むような人々ではないとは言え、河野氏が「イージス・アショア」を取り下げたり、世論受けするパフォーマンスを展開するのは苦々しく思っているはずです。どうして、唐突に敵基地攻撃力の話を出してきたのかというと、河野太郎が反発すれば「本籍は反戦サヨクだろ」というバッシングが可能になるし、万が一乗ってくるのであれば「左派世論からのバッシングの矛先を河野氏にして、思い切り苦しんでもらう」という仕掛けになるわけです。
そのどちらに転んでも、河野さんや茂木さんへの政治的な牽制にはなるということだと思います。そう考えると、黒幕は石破さんだけでなく、岸田さん辺りなのかもしれません。いずれにしても、この動きについては非常に注意して見ていかなければと思います。
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