ファクターXの鍵は「日本の伝統食」か。実は新しかった古の知恵

 

LPSが豊富な日本の伝統食

そのマクロファージに大いに働いてもらうには、まずは、意識してLPS をたくさん摂ることだが、それはけっして難しいことではなく、玄米、無農薬の野菜、納豆、梅干し、味噌汁、海藻などから成る日本の昔ながらの食事を心がければいいだけのことである。それで江戸時代の日本人は現代人の10倍ものLPS を食べていたそうで、そのようにして形作られたDNA は多少なりとも今に伝わっているのではないか。

とはいえ、明治以来の近代化を通じて自然免疫力は次第に失われ、とりわけ戦後になって食生活の西欧化、農薬の大量散布や食品添加物の使用、医療の場面での抗生物質の乱用などによって、マクロファージは酷く痛めつけられてきた。それで花粉症はじめ昔はあり得なかったアレルギー症状が出てきたのだろう。

日本に限らず朝鮮、中国からインド南部まで含めたモーンスーン気候下の稲作地帯に共通する食の原理は「医食同源」で、西欧資本主義的グローバリズムによるその破壊から抜け出すことが、我々のコロナ禍対策の根本ということになるのだろう。

しかし、LPS 摂取増強作戦は食だけではない。人類はいわゆる「バイキン」、すなわちウイルスや細菌、カビ、寄生虫などの攻撃に晒される中で、免疫システムによってそれと戦いつつ今日まで生き抜いてきた。ということはバイキンを敵視し、洗剤や消毒剤を多用して絶滅させようとするのは大間違いで、ほどほどに仲良くするよう心がけなければならない。それにはまず、床に落とした食べ物は拾って食べるのが当たり前という風に子供をしつける親の態度が大事である。

物差しを持ち替える

よく言われることではあるけれども、46億年前の地球誕生を1月1日とする円形カレンダーを描くと、最初の生物である微生物の誕生は3月25日、それから魚類、両生類が生まれて最初の陸上生物が現れたのは11月20日、人類が登場するのは何と12月31日の午後2時30分のことで、大先輩であるバイキンを「汚い」などと感じて絶滅しようとするなどとんでもない傲慢で、それに対するバイキンの側からの「お前ら、いい加減にしろよ」という警告がコロナ禍なのかもしれないとうことになる。

まずは、我々の体内におけるバイキンの働きについて知識を持ち、それと外界との繋がりを巧く調節することなしには、我々は地球上で生きることを許されない存在なのだという自覚を持つことである。

そのように、いったんは地球的な物差しに持ち替えてコロナ禍の現在を測ると、いろいろなことが見えてくる。例えば、コロナ禍の下での「新しい生活様式」は、テレワークだソーシャルディスタンスだとかのカタカナ語の話ではない。

伊藤博文から安倍首相に至る長州の富国強兵の軽薄イデオロギーを引き剥がすと、その向こうに江戸時代までのこの国が持っていた限りなく深い文明の記憶が蘇ってくるというのが、実は、日本人の「旧くて新しい生活様式」という問題なのである。

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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