【書評】文在寅への冷たい視線。大統領は欧州で何をやらかしたか

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朝鮮半島の統一を強く望んでいると言われる韓国の文在寅大統領。では、北朝鮮サイドは韓国をどう見ているのでしょうか。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが紹介しているのは、そんな疑問への答えと、一般の韓国人の北朝鮮への複雑な感情が記された一冊。彼らは「南北統一」についてどのような思いを抱いているのでしょうか。

偏屈BOOK案内:牧野愛博『韓国を支配する「空気」の研究』

717cliiuUsL韓国を支配する「空気」の研究
牧野愛博 著/文藝春秋

20191015日、サッカーワールドカップ・カタール大会(2022年)のアジア第2次予選H組、韓国対北朝鮮の試合が、平壌の金日成競技場で行われた。だが、5万人の収容能力がある観客席には一人の観客もいなかった。両国報道陣の姿もなかった。20189月、平壌のメーデー・スタジアムに金正恩と文在寅がいた。15万人もの熱狂する観衆がいた。文は感激した表情で7分間も演説した。

文在寅らの進歩勢力は、かつて軍事独裁政権と闘争した。進歩勢力にとって、北朝鮮は、「敵(軍事政権・保守)の敵」だから味方だと考えた。北朝鮮はどう見ているのか。韓国の知人が「都合の良い女なのだよ」と説く。金正恩にとって、文在寅はトランプの実態を教えてくれ、仲立ちもしてくれる重要なパートナーだったが、20186月に米朝首脳会議が実現すると変化が。

文政権の北朝鮮に対する提案はことごとく頓挫した。「北朝鮮を一方的に愛する韓国」という構図は、現在の南北指導者層にだけ当てはまる話であって、一般の人の持つ感情はもっと複雑だ。韓国の北朝鮮研究者が著者に「過去、韓国の世論がもっとも否定的になった時期は?」と謎かけをした。答えられぬ彼に「20006月の南北首脳会議の直後さ」。金大中と金正日の初の会談だ。

南と北の経済格差が401の時代、統一したら北の人々の面倒をみるために税金がどっと増えるのではないか、貧困層が流れ込んで治安が悪くなるのではないかと考える人は多かった。既に分断から70年以上経つ。若い人を中心に「無理に統一する必要はないのではないか」と考える人が増えている。感情抜きにしても、「北朝鮮とどう向き合うか」はとてつもなく大きな課題になっている。

歴代指導者の行動を簡明に表現すると、

  • 朴正煕:パルリパルリ(早く、早く)文化の創始者
  • 金泳三:実利を計算しない情と直感の人
  • 金大中:日韓共同宣言を発表した冷徹な実利主義者
  • 盧武鉉:コンプレックスが強かったパポ(馬鹿)
  • 朴槿恵:孤立した「朴正煕の娘」の悲劇
  • 文在寅:「悪いのは相手、自分は悪くない」という旧式思考

……、と非常に興味深い読み物になっている。

2018年ベルギーで開かれたASEM首脳会議、文在寅も安倍首相も出席した。文はフィリップ国王の隣に着席する優遇を受けた。メインディッシュが終わると、文は周囲への挨拶もそこそこに退席してしまった。国王が同席した席を中座する等、想像もできない無礼な行為、常識外れに驚愕。その空席にはドイツのメルケル首相が座り事なきを得たが、韓国に向ける欧州各国の視線は冷え込んだ。

著者が韓国がらみの記事を書くと、必ず右と左の両方から叩かれる。まったく同じ文章なのに、右は「韓国におもねっている」、左は「朝日のくせに韓国に冷たい。ウソの情報をもとに嫌韓記事を書いている」とけなされる。確証バイアスである。著者の知人の編集者たちは「ほとんど専門家と呼ばれている人たちが空中戦を演じているだけだ」といい、結局ふたつの結論に分かれていく。

「韓国は日本とは似て非なる国だ。違う点があっても。不愉快になることもあるだろう。だが、日本人にも韓国人にも『情けは人の為ならず』という言葉をいま一度思いだすべきではなかろうか」となまぬるい言葉であとがきをまとめるこの著者、やっぱり朝日新聞。よく見る「日本人として、自分たちはどうだろうかと胸に手を当てて考えてみたい」という文言。もういいよ~。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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