安倍マジックの正体。保守もアベガー勢も騙される次期総理と解散の行方

 

(第二部)安倍政権をどう評価したら良いのか?

政権への私の評価ですが、かなり難しいと思います。とりあえず現時点での評価を整理しておくことにします。

一番の功績は、右派の支持を利用して中道政策を実施したことです。具体的には、日韓合意(先方が壊したわけですが)、譲位の成功、日米相互献花外交、LGBTQ人権理解に一定の前進、移民拡大、対中関係と対ロ関係の穏健な維持といった、仮に中道政権であれば右派の反対で立ち往生したテーマを、実務的に処理ができたのは大きいと思います。

一方で、3本の矢というアベノミクスについては、結局の所は第3の矢である構造改革が全く進まなかったわけです。これは総理本人が改革の意義を理解していない以上仕方がないとはいえ、政官民の守旧派に利用されまくった7年だという批判は免れえないと思います。

外交は及第点であると思います。特にオバマ外交との協調に加えて、トランプの「スキを見せれば通商や安保面で無茶苦茶を要求される」危険を、自然体のアプローチで懐へ入り込んで、よく「かわした」のは功績です。トランプに頭を下げているようで、国の威信を傷つけることはしなかったわけで、その微妙な演技・演出については勿論、仕掛け人がいたのだと思いますが、安倍晋三という役者はその演出にピタッとハマったのだと思います。その一方でTPP11をやり、欧州との協調、トランプ対策でのG6首脳の結束、対中、対ロなども含めてキメ細かく実施したという評価は可能でしょう。

一番評価が難しいのは、有権者から不思議な支持を受け、それを拡大し続けたことです。その一方で、反対派からは、「アベガー」「アベガー」と延々と批判され、これまた不思議なまでの反感を買ったわけです。その本質は様々な角度から分析しておく必要があると思います。

まず支持の理由は「弱さ」と「裏表のなさ」であると思われます。良家の御曹司、また有能な政治家の長男でありながら若い時には知的訓練ができなかった、その弱さが「知識人への嫉妬」を抱えた層の琴線に触れたのだと思います。私にはどうもピンと来ないのですが、どうにもこうにもそう考えるしかないと思います。健康不安すら支持に転じるということになったわけですが、要するに「強さ」を誇示する人物ではなく「弱さ」を自然体で見せていた人物だったということです。

お子さんに恵まれなかったとか、奥さんが「オッチョコチョイ」だというのも、これまた不思議に「憎めなさ」になっていたのです。では凡人かというとそうではなく、勝負勘や敵味方の峻別という点では一種の迫力もあったわけです。

更に、嘘のつけない、つまりスキャンダルや強行採決など様々な局面で、山のように嘘をついたにもかかわらず、顔にはちゃんと嘘と書いてあったところが支持者には歓迎されたのだと思われます。スキャンダルにしても、私欲のためでなく、群がってくる利権の交通整理を仕切れない「弱さ」の結果として支持者からは、落胆というより同情の対象となったし、反対派の批判が支持者を結束させるというメカニズムが何度も何度も回転していたと思います。

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