一方で、反対派の側の憎悪というのも、これまた歴史に残る不思議な社会現象でした。過去の長期政権においては、佐藤栄作はベトナム戦争への協力故に憎まれ、中曽根康弘は日米軍事同盟と右派的なイメージ、そして行革リストラで恨みを買ったわけですが、そこには説明不能なものはあまり無かったように思います。
ですが、安倍さんが嫌いな人にはここまで憎まれたというのは、なかなか分析が難しいように思います。多分その表層には、若い時の歴史修正主義的な言動への拒否感があり、その上で「無能、無教養な人間が国の舵取りをしている」ことへの拒絶感、素直すぎる性格ゆえに「日米の非対称な関係」などを隠さずに露見させてしまうことで、余計に不快感を持ったのだと思われます。
疑似ファシズムとして、明らかに民主主義の原則を大きく逸脱しているトランプ、ドゥテルテ、ボルソナロなどと比較すれば、安倍政権というのは「はるかにまし」でした。にもかかわらず、同じように「アベガー」「アベガー」と批判され、しかも批判する側が思考停止状態であったというのは、とにかく特筆すべき現象であったと思います。特に、産業構造改革については、総理支持派とアベガー派は右と左の両側から妨害していたとしか言いようがありません。
結局、安倍さんの術中にはまって「敵味方の論理」に入っていくと、何をやっても追及しきれないし、また選挙になれば結局は安倍さんを勝たせてしまう、その繰り返しになったわけです。
image by: 安倍晋三 - Home | Facebook