安倍マジックの正体。保守もアベガー勢も騙される次期総理と解散の行方

 

一方で、反対派の側の憎悪というのも、これまた歴史に残る不思議な社会現象でした。過去の長期政権においては、佐藤栄作はベトナム戦争への協力故に憎まれ、中曽根康弘は日米軍事同盟と右派的なイメージ、そして行革リストラで恨みを買ったわけですが、そこには説明不能なものはあまり無かったように思います。

ですが、安倍さんが嫌いな人にはここまで憎まれたというのは、なかなか分析が難しいように思います。多分その表層には、若い時の歴史修正主義的な言動への拒否感があり、その上で「無能、無教養な人間が国の舵取りをしている」ことへの拒絶感、素直すぎる性格ゆえに「日米の非対称な関係」などを隠さずに露見させてしまうことで、余計に不快感を持ったのだと思われます。

疑似ファシズムとして、明らかに民主主義の原則を大きく逸脱しているトランプ、ドゥテルテ、ボルソナロなどと比較すれば、安倍政権というのは「はるかにまし」でした。にもかかわらず、同じように「アベガー」「アベガー」と批判され、しかも批判する側が思考停止状態であったというのは、とにかく特筆すべき現象であったと思います。特に、産業構造改革については、総理支持派とアベガー派は右と左の両側から妨害していたとしか言いようがありません。

結局、安倍さんの術中にはまって「敵味方の論理」に入っていくと、何をやっても追及しきれないし、また選挙になれば結局は安倍さんを勝たせてしまう、その繰り返しになったわけです。

image by: 安倍晋三 - Home | Facebook

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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