現役医師が危険視。新型コロナのPCR検査「事前確率」の落とし穴

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日本国内で第2波とも言われた新型コロナウイルスの感染拡大は、ようやくそのスピードが鈍ってきたようです。沖縄在住の現役医師、徳田先生は、検査適応の改善が要因の1つと考えています。そして前回の記事で、「特異度(コロナに感染していない人の検体を正しく陰性と出す割合)99.997%と99%では大きな違いがあり、99%と言うのはデマ」と断じた先生は、今回のメルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』で、「事前確率(検査を受ける段階で予想される陽性率のこと)が低い」という表現が正確ではないと、その理由を解説。パンデミックにおける「事前確率」の正しい認識と正しい表現の必要性を訴えています。

PCR検査の検査前確率が低いとは言えない理由

これまでSARS-CoV-2に対するリアルタイムRT-PCR検査の感度と特異度について詳細に考察した。今回は、この検査を行うべき対象者について考える。7月に発表された政府分科会での対象者別の検査適応分類は下記だ。

(1)有症状者
(2)無症状者+事前確率が高い
(3)無症状者+事前確率が低い

このうち、(1)については、もともと政府や感染症関連学会は「軽症の人は検査必要なし」としていた。我々が4月4日に出した最初の提言に従い、今は有症状者は全員検査を受けるべきと政府も述べている。おかげで、現在は検査適応は改善しているのだ。

事前確率を低いとの決めつけはいけない

世界の専門家も最初は日本政府と同じ間違いを犯していた。しかし、封じ込めを目指すべきことを理解し、我々と同じ意見に転換したときには、方針転換についての説明をした。米NIHのファウチー先生は正直に誤りを認めた。謙遜の徳を持つリーダーは信頼できる。

では、(2)無症状者+事前確率が高い、はどうか。これは明らかな濃厚接触歴のある人を指す。これについても、当初政府は、無症状の人は検査は必要なしとの方針であった。今はこれらの人も検査を受けるべきと政府も述べている。これもあり、現在は検査適応は改善しているのだ。

さて、今回の議論は(3)だ。この表現での、「事前確率が低い」は正確ではない。正確には、(3)無症状者+事前確率が不明、とすべきだ。なぜなら、検査対象は一人一人の人間だ。パンデミックの中、国内での市中流行中では我々はどこで感染してもおかしくない。

パンデミックでは事前確率はわからない

例えば、岩手県はこれまで陽性者ゼロだから、岩手県内にいる人は事前確率が低いとはいえない。宮城県での抗体検査での抗体陽性率は低いから宮城県内にいる人は事前確率が低いとはいえない。

東京から飛行機や新幹線を使えば、その日でどこにでも行ける。夜、歌舞伎町の接客を受け、翌朝に新幹線で岩手県や宮城県に移動した人の事前確率は低くない。移動自由な日本では、感染の事前確率は一人一人異なるのであり、事前確率は低いと決め付けることはできない。

これは、人々の行動歴を完全に聞き出さないとわからないのだ。問診で濃厚接触歴があれば、無症状の人の事前確率は高いとはいえる。しかし、聞き出しても正直に答えるとは限らない。本人が気がつかない間に感染者と濃厚接触していることもあり得る。今回の新型コロナのようなパンデミックの場合、事前確率が低いとは言えない。それがパンデミックなのだ。

image by: StreetVJ/Shutterstock.com

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