韓国の親日仕草に騙されるな。対日融和にはしゃぐ文在寅の危険な本性

 

業績ゼロ希有の大統領に

ここで、文在寅氏と金大中氏の政策手法を整理したい。

文氏は、原理主義者である。1980年代の「親中朝・反日米」路線から離れられないという宿命を負っている。現在の2020年代の日韓関係は、どうあるべきという現実感がないのだ。日韓で解決済みの「歴史問題=過去問題」に執着し、再び穿り返して日韓双方が血を浴びるという、これほど非生産的なことはなかった。

日韓慰安婦合意の破棄は、金儲け主義の市民団体が跋扈した結果と判明した。国家間の協定が、市民団体の思惑でひっくり返されては、国家として持つべき矜恃が消し飛んだのである。旧徴用工賠償問題も日韓基本条約で解決済みである。文大統領が、判決直前に韓国大法院(最高裁)を煽って、「人権に時効はない」という演説で誘導したことは疑いない。韓国司法は、大統領の支配権が及んでいるのだ。文氏は、自分で火を付け、自分で消さざるを得ないという、これ以上ない皮肉な立場に立たされている。

金大中氏は、日韓併合時代に生まれた世代(1925年生まれ)である。日本の苗字は「豊田」であった。大統領就任後の来日時に、日本統治時代の恩師を訪問し、「豊田です」と日本語で苗字を名乗ったこともあるほど。日韓併合を冷静に評価していたから、リアリストとなり得たのだろう。文氏の異次元から持ち出される「対日観」は、現実感がゼロであり空想の産物である。

文大統領は、対日観だけが異次元であったわけでない。経済政策もすべて「不合格」であった。文政権発足以来今年5月まで、ギャラップが毎週行う世論調査の累計140回を集計した結果、文大統領を支持する理由は「経済政策」との回答が皆無か、1~2%にすぎないケースが129回にも達していたのである。「雇用創出」との回答も0~2%が、113回に上っている。以上は、『朝鮮日報』(5月22日付)が報じた。

文政権の経済政策は不合格であるにもかかわらず、「積弊清算」、「日韓対立」、「米朝・南北首脳会談」、「新型コロナウイルス」などが、文大統領の支持率を大きく押し上げ、経済の失政を覆い隠してきたのである。文大統領は、言葉巧みに「平等・正義・公正」を演説にちりばめ、進歩派の真髄のごとき演出をしてきた。韓国国民は、この言葉に酔わされてきたのだ。だが、一度は効いた「魔法の言葉」も、聞かされるたびに効用は減る。言葉でも「限界効用逓減の法則」が適用できるだろう。

文大統領の任期は、2022年5月までである。来年3月以降は、次期大統領選の候補者選びが始まる。政界の話題は、文政権から離れて次期政権へ動いて行くのだ。こうなると、文氏が、大統領として実質的に采配を振るえるのは後、5ヶ月しかない。この間に、韓国で旧徴用工賠償問題の法案成立は可能だろうか。

文政権は、国内の市民団体が主張する日本への謝罪要求とか、最終的な請求権を韓国政府が持つべきとかいう「雑音」を消せなければ、日本政府が受け付けるはずがない。韓国市民団体は、NPO・NGOの国際的概念である「政治的中立・非収益事業」を大きく外れて、文政権支持派に鞍替えしている。文政権が、こういう「曲者」団体を納得させて、旧徴用工賠償問題の法案を成立させることは難しい問題だ。まさに、補助金を与えて飼い慣らしてきた市民団体に、文政権は手を噛まれる結果が待っているだろう。

文在寅氏の外交面の成果は、南北融合目的が米中対立の長期化を背景に不可能であること。日韓関係は、極めて修復の困難な局面に向かっている。そのため、旧徴用工賠償問題は韓国国内で、解決するほかなくなっている。

経済面では、世論調査の結果でも極めて低い評価である。文政権の大幅な最低賃金引上げが、雇用を破壊した。企業規制が激しく「規制緩和」と逆行している。「企業性悪説」に立っており、規制強化が「平等・正義・公正」を実現する道と錯覚しているのだ。韓国経済は、こうして衰退するほかないであろう。

image by: 青瓦台 - Home | Facebook

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経済記者30年と大学教授17年の経験を生かして、内外の経済問題について取り上げる。2010年からブログを毎日、書き続けてきた。この間、著書も数冊出版している。今後も、この姿勢を続ける。

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