中国包囲網は日本の国益。なぜ親中ドイツは習近平を見捨てたのか?

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米大統領選の候補者2人による第1回討論会では本質が論じられなかった「米中対決」ですが、ここに来て各国の対中政策に大きな変化が起きているようです。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、親中ドイツの「中国切り敢行」により習近平政権との対決へと舵を切ったEU諸国をはじめ、各国による中国包囲網が強化されつつある現状を解説。さらに菅新政権に対しては、「米中双方に顔が利くアドバンテージを活かした外交をすべし」との提言を記しています。

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Chinaと“決別”する世界

米中対立が激化する中、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが世界各国を襲い、そこで生じた混乱に乗じて中国が勢力圏を広げてきました。マスク外交や医療戦略物資の供給、そして資金援助などを通じた“コロナ外交”を武器に、アジア各国、アフリカ諸国、中東諸国、そして中東欧諸国と南欧諸国へと親中派の形成が進んでいました。9月25日ごろまでは、親中派増勢計画は着々と進んでいたように思います。

欧州では、EUによる対中批判のブロックや骨抜き(ギリシャを中心とした動き)、準加盟国セルビア共和国による中国賛美とEU批判、英・独・仏のコア国の切り崩しなどが進められ、アメリカのトランプ大統領が呼びかけた対中制裁への参加をためらわせるきっかけとなりました。

アジア諸国(ASEAN)では、カンボジア・ラオス・ミャンマーが進めていた“諸手を挙げての中国賛美”が影響し、ASEANとしての中国非難を弱めるかブロックしてきました。アフリカ諸国、中東諸国の外交的支持も取り付け、中国の覇権拡大は確実視されてきました。ついに米中の2ブロック化が進み、他国はそのどちらに与するのかを決めないといけないという状況になるのではとの懸念も高まりました。

しかし、その潮流が今、大きく変わろうとしています。

そのきっかけは、やはり欧州各国による対中政策180度転換でしょう。

これまで欧州各国は共通して、経済・貿易政策上、中国への依存度が非常に高く、Chinaマネーと技術は欧州各国の“毎日”にしっかりと組み込まれていました。アメリカが制裁対象にするHuawei社も、最初の欧州拠点をドイツに置き、その後、各国に普及していったという経緯から、Huaweiに対する態度も温度差がありました。そのような経緯から、トランプ大統領が求めてきた対中強硬策は見送ってきました。

しかし、この潮目が変わったのが、欧州各国からの懸念と抗議にも関わらず、香港国家安全維持法の制定と人権弾圧(新疆ウイグル、チベットなど)が強行され、そして新型コロナウイルス感染症発生の情報を習政権が隠ぺいしていた疑惑が確証に替わると、最も中国と近しいと思われていたドイツ政府が中国切りを敢行すると、フランスをはじめとする他のEU諸国も中国との対決へと舵を切りました。その証がドイツのアジア戦略の大転換と呼ばれた【インド太平洋外交のガイドライン】とフランスの【インド太平洋国防戦略】の発表でしょう。

この動きを止めようと、中国政府も王毅外相を急遽派遣して5か国首脳と会談させましたが、すでに報じられているように、各国とも丁寧に王毅外相を遇したようですが、歩み寄りは全く見られませんでした。これに習近平国家主席が激怒し、「中国は人権の教師は不要!!」とメッセージを送り、欧州各国に“警告”を送りましたが、EUはこれまで数年かけて進めてきたEU-China経済・貿易協定の交渉を打ち切り、中国との対決を選択しました。

これにより“西側自由諸国”の温度差が縮小したのみならず、中国が画策していた欧州の分断もとりあえず阻止できたようです。

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