今回の問題が発端というわけではないが、日本学術会議に関する見逃せない報道がある。日本学術会議が「日本の防衛研究は認めないが、中国の軍事研究には参加する」という情報が広がっているというのだ。
BuzzFeed Newsによると、ネット上で広がっているのは、以下のようなツイートだ。
日本学術会議。「防衛研究は認めないが、中国の軍事研究には参加する」という結構な反日組織になっており、今回の官邸側の動きは十分理解できる。
「中国との戦争はもう始まっている」と痛感させられた。「戦争の結果は戦争する前に決まっている」ので、こういう地道な改善は重要。
どうやらこのネタ元は自民党の甘利明・元経済再生担当相らしい。甘利氏は自らのブログ(8月6日)で以下のように記している。
日本学術会議は防衛省予算を使った研究開発には参加を禁じていますが、中国の「外国人研究者ヘッドハンティングプラン」である「千人計画」には積極的に協力しています。(中略)中国はかつての、研究の「軍民共同」から現在の「軍民融合」へと関係を深化させています。つまり民間学者の研究は人民解放軍の軍事研究と一体であると云う宣言です。軍事研究には与しないという学術会議の方針は一国二制度なんでしょうか。 ※
「千人計画」とは、中国政府が破格の待遇で海外から、優秀な研究者を引き抜いている国家的プロジェクトだ。技術の流出や盗用、軍事転用が心配されるため、アメリカではFBIが目を光らせているとか。
これについてBuzzFeed Newsがファクトチェックをしている。結論だけ言うと、「千人計画」への協力は事実誤認だ。学術会議として他国との間で「研究(計画)に協力」しているという事実がないのである。
甘利氏は政権中枢に近い元大臣で、現在も自民党の要職を務める責任ある立場だ。その人が、よく調べもせずに、日本学術会議を貶めるような言説を吐くことなど許されるはずもなく、ましてや、事実を承知したうえでデマを流したとしたら悪質極まりない。
それを素直に信じて、これ見よがしに拡散したり、物知り顔に「日本学術会議は中国寄りだ」と喧伝する日本人がいることは、実に嘆かわしい。
※ 編集部注:その後、甘利氏は『「千人計画」には積極的に協力しています』→ 『「千人計画」には間接的に協力しているように映ります』と修正しています。
image by: 首相官邸