近年、台湾に対する強硬な姿勢を隠そうともしない中国。10月23日に行われた朝鮮戦争参戦70周年の記念大会では、習近平主席が台湾への武力行使を念頭に置いた演説を行うなど、エスカレートの一途を辿っています。そんな中国が「2028年までに台湾統一を実現させる」とするのは、株式会社オンザボード代表の和田憲治さん。和田さんは今回、無料メルマガ『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』でその根拠を示すとともに、習主席が掲げるスローガン「中国の夢」の本質を暴いています。
習近平率いる中国共産党はなぜ侵略を繰り返すのか?
和田です。
2012年に、習近平が中国国家主席の座についた時、「偉大なる中華帝国の復興」という発言をしました。これは過去には「偉大なる中華帝国」があったし、それをこの現代で取り戻さねばならないというもの。
習近平が言っているこの「中華帝国」とは、今現在の中華人民共和国とは全く関係のない王朝ですが、過去にも自分たちの帝国があったのだからそれは取り返さないといけないという、弱肉強食の中国大陸に生きる人間の強いメンタルを感じます。
かつてモンゴル系や満州族らの民族が支配し拡大した過去の「中華帝国」の業績を自分たち漢族の成功体験にすり替えている。自分のものでなくとも、自分の成功体験として図々しくも持ち続けている点を侮ってはいけない。
中国国防大学教授で上級大佐の劉明福はインタビューでこう答えている。
※ 劉は習近平の政治スローガン「中国の夢」の理論的支柱で、長年教壇に立って軍高官らを指導してきた人物です
戦略は3つあります。
1つ目が「興国の夢」。建国100周年の2049年までに経済や科学技術などの総合国力で米国を超え、中華民族の偉大な復興を成し遂げる。
2つ目が「強軍の夢」。世界最強の米軍を上回る一流の軍隊をつくる。
そして最後が、「統一の夢」。国家統一の完成です。中でも台湾問題の解決が、「中国の夢」の重要な戦略目標となります。まずは平和的な統一を試みるが、それを拒むならば軍事行動も辞さない。
習は、2018年3月に「2期10年」だった国家主席の任期を撤廃している。ただ、現在67歳という習の年齢を考えると、3期目が終わる2028年には引退する可能性が高い。それまでには台湾統一を実現するということになる。
同時に、彼ら中国人には強烈な劣等感からくる、復讐思想があることも忘れてはいけない。
「百年屈辱」「恥辱の一世紀」、「勿忘国恥」(国恥を忘れることなかれ)なども標語になっている。
清時代に欧米列強に好き勝手に侵略され、アヘン戦争で香港を割譲してしまったことなどは大きなルサンチマンとして持ち合わせている。
人は自分が落とした財布なら取り戻して当たり前だと思うだろう。さらにスリに盗まれてそれに気づくとキレて取り返すに違いない。
習近平のスローガン「中国の夢」とは落としていた財布は中国の財布ではないのに、それは不当に盗まれたものだと主張し、キレて取り返すべしという話なのです。
これが今の中国の性質・体質ということです。この論理で見ると、チベット、ウイグル・香港などは、もちろん、自分のものなのだ!という果てしない強欲さも納得ではないでしょうか?
悪質かつ、逆恨み的な感情を国民に持たせていると認識しておくべきでしょう。(文中敬称略)
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