自民こそ既得権益集団だ。学術会議バッシングに勤しむ政治屋の面々

arata20201119
 

日本学術会議の任命拒否問題についてその説明責任を果たさぬどころか、同会議について既得権集団とまで言い出した菅首相。国民の生活よりも党内出世を優先するかのような自民の議員たちもこぞって同じような声を上げ、首相への擦り寄りに余念がありません。この「惨状」に疑問を呈するのは、元全国紙社会部記者の新 恭さん。新さんはメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、そもそも現在の会員選考方法は二度の法改正を経たものであるという事実を紹介した上で、未だ任命拒否理由を説明せず、学術会議の組織的問題にすり替えている菅官邸こそがブラックボックス化した組織ではないかと強く批判しています。

日本学術会議は既得権集団なのか

しつこいようだが、日本学術会議の会員候補への任命拒否は、総理大臣による違法行為である。「人事については差し控える」の一点張りで、任命しない理由をいっさい説明しないのは、問答無用の強権発動であり、少なくとも民主主義国家を標榜する以上、許されない。

話は以上で尽きるのだ。学術会議のあり方、体質、会員選出方法など、設立当初から議論されてきたテーマは、ひとまず横へ置いておかねば話がズレてしまう。

にもかかわらず、やれ左翼イデオロギーの巣窟だの、軍事研究への反対は学問の自由の侵害だのと、一面的な見方による学術会議バッシングが世にはびこっている。

菅首相に至っては、「既得権集団」と決めつけるのだが、何が既得権なのかははっきり言わない。学術会議会員というステータスをもってそう言うのなら、国会議員という地位を代々受け継いでいる議員の多い自民党などは、真っ先に切り込まねばならない「既得権集団」であろう。

実際はそんなことではなく、安倍政権の官房長官であったころから、タカ派的政策に批判的な学者を目の敵にしていて、今回、そのケのある6人を見せしめとして血祭りにあげただけなのだ。それをごまかし、正当化するための「既得権集団」論が自民党内では幅を利かしているようである。

11月2日の衆院予算委員会における、菅首相と大塚拓議員(自民党)のやりとりは、その一端を見せつけた。

まず大塚議員は人文・社会科学系の学者をターゲットと定めた。

「学術会議(会員210人)は第一部(人文・社会科学)、第二部(生命科学)、第三部(理学・工学)、各部70人づつに分かれているが、第三部に対応する研究者数が全研究者(約89万人)の7割も占めているのに、第一部に対応する研究者は1割に過ぎない。計算すると、人文・社会科学の人たちは理学・工学の人たちより6倍、会員になりやすい」

そして、さらに狙いを絞りこむ。主張の概略はこうだ。

「うち法学・政治カテゴリーの会員は21人(研究者総数8,177人)なのに、電気・電子工学は4人(同15万3,900人)で、100倍違う。偏っている。既得権化している。ブラックボックスになっている。選考プロセスに問題がある」

法学・政治は389人の研究者に対し会員一人。電気・電子工学はそれより100倍多い3万8,475人に対し会員一人というわけである。

この論法でいくと、法学・政治分野の会員はほとんどいらないということになる。なにしろ、圧倒的に理系の研究者が多いのだ。国会議員の選挙のごとく「一票の格差」論めいたものを当てはめるとなれば、学術会議に人文・社会科学系の会員が極端に減り、それこそ偏ってしまうだろう。ちなみに、歴代会長はほとんど理系の学者がつとめていて、どうみても法・政治学分野の意見が強く反映されてきたとは思えない。

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