香港の次は台湾。中国の時代錯誤な「独立派」取り締まり脅迫の手口

 

独裁国家にとってブラックリストは重要です。反乱分子となる人物を根絶やしにするための重要な手法です。かつて、国民党が独裁政治を敷いていた台湾にもブラックリストは存在していました。このニュースを見たとき、私はかつての台湾を思い出しました。

国民党による戒厳令下の台湾では、ブラックリストとセットになって旧刑法100条が使われていました。旧刑法100条とは、内乱罪を規定したものであり、主に表現の自由を制限したものです。これを口実に多くの罪なき人が逮捕、投獄され、時には死刑にされました。

そんな情勢下でも、自由と民主を渇望した人々は、台湾独立活動をやめませんでした。彼らは当然ながら国民党のブラックリストに載り、旅券を剥奪されたため、日本に亡命しました。許世楷、黄昭堂、金美麗などのほか、かくいう私もその一人です。表現の自由を求め、『自由時代』という雑誌の編集長を務めた鄭南榕は、抗議の焼身自殺を図り、この世を去りました。台湾の暗黒時代、白色テロ時代です。

その後、1988年李登輝が総統になり、1992年にブラックリストは解除され、私も台湾に戻ることができました。台湾は民主化に向けて急速に変化し、国民党は野党となり、若者は「天然独(生まれながらにして独立志向)」といわれる時代となりました。わずか30~40年の間に、激動の変化を遂げました。同時に、かつてのブラックリストに載った人々は年を重ね、次々とこの世を去っています。

以前、このメルマガでご紹介した台湾の政治ドラマ『国際橋牌社(アイランド・ネーション)』第1シーズンが、2020年5月、台湾の公視テレビで放送されました。製作者の予想以上に評判がよく、続編の製作が予定されているとのことです。

台湾初の本格政治ドラマ、公共テレビで5月に放送 「国際橋牌社」

このドラマは、台湾が民主化へ舵を取り始めた1990年代を舞台にしており、製作側は物語はすべてフィクションだと言っていますが、実際は実在の政治家をモデルにしていると言われています。

台湾人初の総統となった李登輝、李登輝の側近だった王燕軍、軍人出身で行政院長を務めた?柏村などです。彼ら政治家と実際の歴史上の出来事をベースに、総統侍衛長、白色テロ犠牲者の娘、陸軍トップの令嬢、与党青年幹部、女性新聞記者、フリーランスカメラマンの若者6人それぞれの人生が描かれています。テレビドラマでは初めて総督府で撮影が行われたこともニュースになりました。このドラマは、台湾の民主化を描いたものであることから、一部報道では、中国でのブラックリスト入りを恐れて出演を辞退した俳優もいたとのことです。

中国の「ブラックリスト指定」を恐れて出演辞退も…台湾初の本格政治ドラマが好発進

長くなりましたが、私からしてみれば政治思想的ブラックリストとは白色テロ時代の遺物であり、2020年の今、台独分子のブラックリストを作るぞと公言して脅すなど、時代錯誤も甚だしいということです。中国共産党がどれほど強権を用いて台湾人を脅しても、その脅しの手が古ければ恐れるに足りないし、むしろ失笑ものです。中国のやることはいつもそうですが、まるで存在している時代が違うかのような錯覚に陥ります。かと思えば、デジタル監視社会という最先端の一面も持っています。中国社会は実にアンバランスな社会です。

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