500万円受領疑惑の吉川元農水相、新聞報道から炙り出された後手後手の過去

 

【サーチ&リサーチ】

《東京》が伝えてきた、吉川貴盛氏に関係があると思われる61件の記事。最初に出てきたのはTPP絡み。

2016年3月25日
衆院TPP特別委員会に西川公也元農水相が委員長に就任したとのニュースの中で、「自民党の吉川貴盛元農林水産副大臣と民主党の近藤洋介元経済産業副大臣が与野党双方の筆頭理事に就任した。」とある。

*その後はTPP関連の国会質問など。また自民党北海道連の会長代行として参院選の応援に来た安倍氏に同行など。17年の総選挙で当選後、道連会長として要望書を安倍氏に渡したり、北海道を訪れた首相と会い、また東京には道議を引き連れて首相に面会に行ったりしている。そして…。

2018年10月2日付
第4次安倍改造内閣に農水相として初入閣する。二階派の「入閣待機組」のひとりだった。

2018年10月5日付
大臣就任に当たってのインタビューで、いくつかの質問に答えているが、一番具体的だったのは、北海道の地震で生乳の廃棄が発生した問題についての次の答え。「廃棄した生乳への補助はできないから、別の形で取り組む。乳房炎関連や非常用電源を確保する費用など農林水産省がとりまとめた対策を具体的に知らせていく」と。

*農家が困っている具体的な点について知識がある人なのだろう。だがこのとき、日本農業には大問題が降りかかっていた。それがトランプ政権との貿易交渉。吉川氏と農水省は、過去にEUと結んだEPAの水準を落としどころにして、それ以上の要求を撥ねつける作戦を採っていた。

*豚コレラ感染の問題、末松広行農水事務次官のパワハラ疑惑を経て大きな方向転換が行われる。

2018年12月26日付
「政府は26日、クジラの資源管理を担う国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、来年7月から約30年ぶりに商業捕鯨を再開すると表明」した。吉川氏は自民党の会合で「厳しく険しい道のりだった。商業捕鯨の再開は地域の活性化につながる」と述べている。

*19年2月、豚コレラが5府県に広がり、ワクチンを使うべきだとの声が出たが、吉川氏は、ワクチンをいったん使うと清浄化に時間が掛かり、輸出再開が遅くなるとして応じず、感染を拡げているとみられる野生のイノシシにワクチン入りの餌を食べさせる作戦に出る。

2019年2月22日付
吉川農相は、「岐阜県や愛知県で相次いでいる豚(とん)コレラへの新たな対策として、野生のイノシシにワクチン入りの餌を三月から散布すると発表」した。

*2020年になってからは記事らしい記事がない。10月21日時点で北海道連会長であることは間違いない。

●uttiiの眼

自民党北海道連の会長だから当然とも言えるが、一連の行動は、吉川氏が「北海道の代理人」という性格を帯びていることを示しているように思う。とくに農業の実際に比較的詳しく、農産物輸出に熱心な議員という印象。独自の政策と言えるようなものは、記事を見る限りなさそうだ。

気になったのは「豚コレラ」(人のコレラとは無関係なので、現在は「豚熱」と言い換えられている)への対処の仕方。豚コレラの感染が広がり、養豚農家は苦しい状況に置かれ、たとえ輸出ができなくなっても、ワクチンで感染を収束させて欲しいと強く願っていたにもかかわらず、吉川氏と農水省はなかなか接種に踏み切らなかったが、結局19年の9月28日に感染発生府県で豚にワクチンを接種することを決める(12月20日には未発生の都県についても、接種することに)。

丁度、感染の第3波が襲っている最中にGo Toトラベルを停止しもせず、無症状の感染者を探し出すための「社会的検査」に後ろ向きであり続けている菅政権の新型コロナ対策と、発想に似たところがある。まず感染の広がりを押さえるために全力を尽くすことが、いち早く病気を収束に向かわせるために必要だったのではないか。この点で、人間の新型コロナと豚の豚熱に対する対応は同じ発想に立っていた。

さて、典型的な農水族であり、北海道の自民党の中心人物でもある吉川氏を巡るスキャンダル。続報として、どんな事実が出てくるのだろうか。

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image by: 吉川貴盛ホームページ

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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