トランプの思わぬ置き土産。日米台「半導体同盟」が中国覇権を打ち砕く

 

アメリカ政府の決定には120日間の猶予期間が設けられていたため、実際にファーウェイとの取引が完全に停止となるのは、2020年9月15日でした。そして9月15日以降、ファーウェイは自社開発の半導体を輸入できなくなりました。

中国にも中芯国際集成電路製造(SMIC)というファウンドリーがあります。しかし、技術力ではTSMCに及びません。また、2020年12月18日には、アメリカ商務省がアメリカ企業からの輸出を禁止するリストにSMICを新たに加えると発表。これにより、中国以外ではSMICと取引する企業はなくなり、結局、半導体製造ができなくなる可能性が高くなりました。

こうしたアメリカの締め付けにより、中国の半導体メーカーは苦境に立たされています。たとえば、中国の国有半導体大手の紫光集団は、2020年12月10日、利払い日を迎えた人民元建て社債の利息を期日どおりに支払えなくなったと発表しました。

中国の半導体大手「紫光集団」が破産の崖っ縁

習近平政権は、アメリカの制裁強化に対して、半導体の自国製造化を進めるとしてきました。そのため、中国国内に多くの半導体メーカーが乱立しましたが、技術力がなく計画もずさんなために、次々と破綻の危機に陥っています。

2017年11月に武漢市の肝いりで総額1,000億元(約1兆5,000億円)のプロジェクトとして立ち上げられ、工場建設が進められていたファウンドリーの武漢弘芯半導体製造(HSMC)は、わずかその3年後の2020年9月には資金不足が理由で工場建設がストップしました。一部の中国メディアは「中国の半導体産業で史上最大のペテン」と批判しているといいます。

半導体の国産化へ前途多難 武漢の巨大工場建設、資金不足で停止

日本の携帯キャリアにも中国製スマートフォンを販売しているところがありますが、今後、間違いなく減少していくでしょう。

すでに日本政府は省庁や重要インフラを担う企業の調達において、安全保障の観点からファーウェイ製品を排除しています。これはアメリカ政府と歩調を合わせたものです。アメリカではファーウェイが情報を抜き取って中国に送っているという疑惑により、政府や軍でのファーウェイ製品の使用が禁止されています。

日本国内の携帯各社も次世代規格の5G通信網ではファーウェイの機器を使わない方針を示しています。ファーウェイは日本政府にソースコードを公開すると提案しましたが、日本政府はこれを拒否しました。すでに日本の通信網からの排除が決まっている企業であり、今後、ファーウェイ製品が市場から消え、メンテナンスも先細りになるのは避けられないでしょう。

ファーウェイとの取引を打ち切った台湾のTSMCは、1兆3,000億円を投資してアメリカに工場を建設することを発表しています。TSMCはすでにワシントン州キャマスに半導体工場を持っていますが、これに加えて、アリゾナ州により先進的なチップのための半導体工場を建設する計画を発表しています。同工場での生産開始は2024年の予定です。

明らかにTSMCは中国と手を切り、アメリカ側につく決定をしたというわけです。いうまでもなくこれは、アメリカの対中戦略と、米台協調路線に歩調を合わせたものです。

TSMCは中国の江蘇省南京にも工場を持っていますが、アメリカの規制強化や台湾政府が先端プロセスの流出を危惧していることから、12nm(ナノミリ)よりも微細なプロセスの提供は行われておらず、次世代技術のEUV(極端紫外線)露光技術も採用されていないそうです。

TSMCが南京工場を拡張、さらなるファブ増設の可能性も – 台湾メディア報道

もっとも、アメリカの規制により半導体の輸入が止まったため、TSMCの南京工場には中国国内からの注文が殺到しているといいます。

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