トランプの思わぬ置き土産。日米台「半導体同盟」が中国覇権を打ち砕く

 

そして、冒頭の、TSMCが日本で工場を設立するという報道です。もともと日本は半導体の素材となるシリコンウェハでは世界の約62%を占め、1位が信越半導体(世界シェア32%)、2位が住友金属と三菱マテリアルが統合してできたSUMCO(世界シェア25%)と、この2社だけで57%を占めています(2019年、楽天証券資料)。

それだけに、TSMCにしても日本に工場をつくるメリットがあります。そしてアメリカと日本にTSMCの工場や新会社が設立されれば、日米台に強力な半導体サプライチェーンができることになります。

中国発の新型コロナウイルスの感染拡大を台湾がいちはやく防いだことは周知のとおりです。そのため、台湾の中央銀行は2020年の台湾の経済成長率を2.58%と見込み、2021年も3.68%成長と予測しています(2020年12月17日発表)。その牽引役となっているのがTSMCなのです。同社は半導体企業の時価総額で世界1位(2020年8月)であり、2020年の業績は新型コロナウイルスによる自宅でのオンライン作業増加によるパソコン需要、巣ごもりでのゲーム機需要の高まりから、前年比48.6%という高い伸びが見込まれています。

その一方、需要の高まりによって半導体不足が生じており、自動車業界などは車載用半導体が調達できずに減産をせざるを得なくなりました。

このように、中国向けの半導体輸出が禁じられても、世界的には半導体不足が続いており、そのなかで中国自身は、半導体の国内製造がうまく進んでいないという状況に陥っているわけです。

中国は「新型コロナウイルスの封じ込めに成功し、経済もプラス成長に転じた」などと吹聴していますが、新型コロナが回り回って中国の首を締めているわけです。

加えて、半導体不足には日本の企業の部材製造が追いついていないことも原因の1つだといわれています。それはCPUの絶縁体として使われる「ABF(味の素ビルドアップフィルム)」というもので、その供給不足が、世界的な半導体不足を招いているといいます。

味の素が半導体のキーパーツをつくっていたということには驚きですが、さらに驚いたことに、ABFは全世界の主要なパソコンのほぼ100%シェアだそうです。前述のシリコンウェハに加えて、こうした半導体部材のキーパーツは日本が独占しており、そのことは、今後の世界的な半導体サプライチェーンの鍵となるでしょう。日米台の連携が、世界の半導体産業を大きく変える可能性があります。

ファーウェイ排除にともなう米中のスマートフォン競争については、スマートフォン用CPUの基本設計で独占的地位にあるイギリスのアーム社(ARM)を、アメリカのNVIDIAが買収を進めており、これに対して中国が猛反発をしています。ファーウェイは独自のCPUを製造していますが、その設計はアームのアーキテクチャによるものだからです。

アームは日本のソフトバンクが2016年に買収して子会社化していましたが、2020年9月、ソフトバンクはアームの全株式を約4兆円でNVIDIAに売却すると発表しました。

ただし、実際の取引が完了するまでには各国の規制当局の審査も必要であり、約18カ月の時間がかかるといいます。そこで、中国当局は必死でNVIDIAの買収を阻止しようとしています。

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