ホンマでっか池田教授が懸念、GPS利用が「認知症」を加速させる可能性?

 

10万年ほど前から波状的にアフリカを出立してユーラシアに渡ったホモ・サピエンスは、1万年前までには5大陸すべてにその棲息域を拡げた。陸地の地図も海図もなかった時代、磁場を感知する能力がなければ、これだけ広範囲に移住できたとは考え難い。移住した土地で、定住生活を始めると、自分の住処の周りの地図が必要になる。自分の脳以外に記録媒体がなかった時代、地図はもちろん脳内に作られたわけだ。

脳内地図の存在する場所は大脳辺縁系にある海馬だ。海馬は灰白質の領域で、記憶の中枢としてもよく知られる場所でもある。脳内地図を作るためには場所の記憶が必要で、記憶能力と空間認知能力は深く関係しているのだ。ある時、何処に居るか分からなくなり、自宅に帰れなくなってアルツハイマー病を発症していることが分かる場合があるが、アルツハイマー病では脳の中でも特に海馬が委縮するので、記憶障害ばかりでなく見当識障害も現れる。

カーナビが出現する前のロンドンのタクシー運転手は海馬が平均より大きかったと言われているので、脳内地図がしっかり作られてナビゲーション能力のある人は簡単には呆けないかもしれない。海馬には、例えば場所細胞というのがあって、一つの場所細胞は一つの場所をコードしており、その場所に行くと興奮する。そのことによって自分が今何処に居るかはっきりと認知できるのだ。新しいところに移住して、暫く周りをうろつくと、以前の場所細胞はリセットされて、それぞれの場所細胞は新たな場所をコードするという。場所細胞以外にも海馬にはいくつかの細胞群があり、これらが動的に機能してナビゲーション能力を支えているのだ。(メルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』より一部抜粋)

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