「破壊」と「繁栄」の30年周期。渋沢栄一の子孫が説く、これからの日本の姿

 

これからの競争力は「グリーン」がキーワード

素人ながら、2050年カーボン・ニュートラルを実現させるためには三つの矢が必要だと考えます。

  1. カーボン排出抑制の技術
  2. カーボン・リサイクルの技術
  3. カーボン・オフセットの制度です。 

1)と2)のコストダウンには、開発研究のための投資資金と時間がかかりますが、ここがまさに新たな成長の可能性がある領域です。しかし、現状の技術を前提とすると3)のカーボン・オフセットについては、カーボンを吸収する事業から排出する事業へと、排出権を移転できる「カーボン・クレジット」(排出権取引)を、国内に留まることなく世界で通用する制度を設計することが急務でしょう。 

これから30年、「グリーン」が世界各国の競争力の源になることは間違いありません。 

トランプ政権と異なり、バイデン新政権では「グリーン」が米国の経済政策のど真ん中に入ってくると思います。経済政策を安全保障、社会保障などの側面も含めて大統領に助言するアメリカ合衆国国家経済会議(NEC)の委員長という重要ポストに42歳の若手、ブライアン・ディーズが任命されたことが目を惹きました。 

前職は世界最大手の運用会社の一つであるブラックロックのサステナビリティ投資の責任者で、その前の30代ではオバマ政権のNECで温暖化を担当する次官でした。年齢的には若手かもしれませんが、温暖化・経済政策のベテランです。かなりのスピード感で米国は「グリーン」へと舵を切るでしょうから、日本も遅れをとるわけにはいきません。 

2025年の大阪・関西万博で日本が描く「いのち輝く未来社会のデザイン」に「グリーン」は不可欠です。現状からは大きな飛躍かもしれませんが、日本が「グリーン大国」であることを誇ることができる世界舞台でもあります。現在では非現実的に見えても、ムーンショットで飛躍した未来図からのバックキャスティングという発想で実現させるためには、このタイミングを逃してはなりません。 

特にグリーン分野では多様な専門性を持つ多くの若手を重要ポストに登用することが重要ではないでしょうか。なぜなら、全く新たな分野において、若手がこれからの社会の主役として実績を数多くつくる必要があるからです。DX(デモグラフィック・トランスフォーメーション)という世代交代とカーボン・ニュートラルという飛躍が、これからの日本の繁栄の時代への扉を開くことになるでしょう。 

 □ ■ 付録:「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □
『論語と算盤』経営塾オンライン 

『論語と算盤』勇猛心の養成法

要するに我が国今日の状態は、
姑息なる考をもって、
従来の事業を謹直に継承して足れり
とすべき時代ではない。

人々は今日の一日の過ごし方は昨日の過ごし方と同じであって、明日の過ごし方は今日の過ごし方と同じであることに甘んじ、基本的に変化を好みません。しかし、時代は必ず変化し続けます。したがって、私たちの生活の過ごし方を持続させるには、時代の変化に対応しなければならない。若い世代は、常に新しい時代に適応する能力を持っています。だからこそ、日本で優先すべき事項はDX(デモグラフィック・トランスフォーメーション)なのです。

『渋沢栄一 訓言集』一言集

前途の遼遠なる事物は、ゆっくり急いで努めねばならない。

2050年までカーボン・ニュートラルの日本社会は、はるかに遠いところにあります。だからこそ、今から、確実に一歩一歩と前進して、数多くの「前例」をつくって行くことが大事なのです。

謹白

image by: shutterstock

渋澤 健(しぶさわ・けん)

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