専門家が教える「退職勧奨」不良社員をモメずに追い出す方法とは(台本付き)

 

<退職勧奨面談の具体的な進め方とトークスクリプト>

ここまで述べてきたとおりの周到な準備をおこなった上で面談に臨めば、問題社員が打ち出してくるさまざまな「辞めない理由」を即座に打ち返すことができるはずだ。あとは、このような形で面談を進めていけばよいだろう。

(1)資料を揃え、対象社員を会議室など個室に呼び出す

事前準備段階で用意していた、問題社員にまつわるヒアリング情報やこれまでの人事評価資料、懲罰実績などをまとめた資料をあらかじめ揃えておき、対象社員を個室に呼ぶ。衆人環視の状況ではハラスメントとなるリスクがあるため、静かに話ができる会議室などが望ましい。

(2)対象社員に退職を求めたいという意向を伝える

結論として「退職してほしい」という趣旨の話をするのだが、いきなり退職の話を切り出してしまうと収拾がつかなくなるリスクもある。したがって、多少回りくどくはなるが、「対象社員の問題行動に対して再三の指導をしても改まらなかったため、会社としては残念だが退職を勧める」という形をとると自然になる。具体的には以下のような流れになるだろう。

「対象社員には多くの問題行動がみられた」

「これまで再三にわたって指導し、改善を求めてきた」

「しかし、残念ながら改善がなされなかった」

「あなたと当社は合っていない(ミスマッチ)のではないか」
「社外で、もっと合う会社を見つけた方が良いのではないか」

「会社として、あなたに退職してもらいたいと考えているので、合意してほしい」

(3)退職勧奨の具体的な進め方

<切り出し方>

「これまで○○さんの勤務態度/業績については、上司の◇◇さんから何度も指導がなされ、改善するようにお願いをしてきました」

<問題行動の例示>

「●年◆月に顧客対応でトラブルになった際は、△△というお話をしましたが、その後も同様のトラブルがあったため、◇月に注意指導書が交付されています」

「●年◆月に▼▼さんとのやりとりでトラブルになった際は、●●という形でお願いしましたが、その後△▼さんと同様のトラブルが起きたため、◇月に警告書が交付されています」

「これまで○○さんには■回の指導記録があり、□回の注意指導と◆回の警告がなされ、その度に改善をお願いしてきました。しかし今般、また同様の問題を起こされました」 

<雇用継続努力の説明>

「会社としては極力、○○さんに対して拙速な処分はおこなわず、『改善する』との言葉を信じて機会を提供してきました」

「○○さんのご意向を尊重し、顧客との接点がない●〇部への異動も実施し、業務内容を変えて臨んで頂きましたが、残念ながらそれでもトラブルが起きてしまいました」

「○○さんには教育研修機会/猶予期間を設定し、その後の改善の様子を拝見していましたが、残念ながら改善が見られず、◆ヵ月にわたって業績が回復することはありませんでした」

<退職を勧奨する>

「○○さんについてどう処遇すべきか、他にお任せできる仕事がないか、等について社内で何度も話し合いました」

「結果として、現時点で○○さんにはこの会社でお任せできる仕事がないという結論になりました」

「私たちは、○○さんにはこの会社や仕事が合っていないと考えています。そのため会社としては、○○さんに退職して頂き、社外での機会を得て頂きたいと考えています」

<(用意できれば)メリットとなる条件を提示する>

「今回退職を決意頂ければ、●ヵ月分の割増退職金をお支払いする用意があります」

「○○さんには退職届をご提出頂きますが、離職票では『会社都合退職』扱いとすることで、雇用保険を最短でも90日間、最長で330日間受給することが可能になります」

「自主退職に合意頂ければ、本来であれば『懲戒解雇処分相当』であったところを『自己都合退職』として、懲戒なしの扱いとし、離職票にもそのように明記することとします」

<回答の期限を伝え、検討を促す>

「もちろん、すぐに返答を求めているわけではありません。ご家族にも相談しなければならないでしょう。来週の●日にまた面談を設定しますので、それまでにお考えになってください」

このような形で、問題行動については詳細に例示し、会社としてもその度ごとに指導や注意をおこないつつ、何度も改善のチャンスを提供してきたこと、しかし問題が改善されなかったことを冷静に伝える。

注意点として、退職勧奨の場では本人を非難したり批判したりするのではなく、あくまで「本人と会社、および業務内容がフィットしていなかった、「ミスマッチ」であるから今後のキャリアを考えてみてはどうか、というスタンスで話すことがポイントとなる。

また仮に、今すぐにでも去ってほしい問題社員相手だとしても、退職勧奨を受け容れるか否かの回答を面談の場ですぐに求めることは、あまりよい印象が残らないので避けるべきである。

対象社員に家族がいる場合は相談も必要であるため、会社側から退職を求める意向を伝えた後は、改めて面談日程を設定し、それまでに回答するよう促せばよいだろう

※本記事はメルマガ『ブラック企業アナリスト 新田 龍のブラック事件簿』の2021年1月8日号に掲載されたものの一部です。2021年2月中のお試し購読スタートで、2月分の全コンテンツを無料(0円)でお読みいただけます。

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