大人数の社員を抱える大企業であればあるほど、組織の和を乱す問題社員はいるものですが、そうした社員とトラブルになることなく、スムーズに退職してもらうにはどうしたら良いのでしょうか? メルマガ『ブラック企業アナリスト 新田 龍のブラック事件簿』の著者で働き方改革コンサルタントの新田龍さんは、比較的トラブルになりにくい「退職勧奨」の方法について具体例を挙げながら解説。問題社員をうまく説得して退職へと導くノウハウについて解説しています。
【関連】ブラック企業アナリストが暴露。日本人の給料が上がらない複雑な事情
ブラック企業アナリストの新田龍さんがさまざまな企業の実態を暴露!興味深い話が満載のメルマガ無料お試し読みはコチラ
問題社員をトラブルにならないようクビにする方法は?
本メルマガでは、トラブルになりにくいクビ切りの手段としての「退職勧奨」について数回に分けて解説している。
【関連】1500人もの社員を「適法」でクビにした日本IBM「退職勧奨」の実態
退職勧奨とは文字通り、従業員を退職に向けて説得し、相手の同意を得て退職させることである。解雇と比べると従業員の同意を得ている点で問題化しにくく、企業としてのリスクも低いというメリットがある。
また、コロナ禍に限らず、平時であっても、問題行動を繰り返す迷惑な社員を排除する手法としても用いることができるのだ。
では実際、問題社員を前にどのような形で退職勧奨をおこなえばよいのか。事前準備も含め、進めかたを具体的に説明していこう。
<退職勧奨面談に臨む前の準備事項>
(1)退職勧奨したい問題社員の身辺について細かく情報収集するとともに、情報共有しておく
人事資料を参照することはもちろん、直属上司や同僚社員、部下などにもヒアリングし、退職勧奨したい社員についてあらかじめ調査しておくことで、その後の交渉をスムースに進めることができる。
具体的には「家族構成」「配偶者は働いているか否か」「子供の有無と年齢」「持ち家か賃貸か」「住宅ローンの残高」「要介護の親族の有無」「職場での評価」「これまでの人事評価資料」「懲罰実績」など、可能な限りの情報を集め、資料としてまとめておこう。これらの情報の存在によって面談時の主導権を握ることができるうえ、仮に対象社員が反論してきたとしても、具体的な根拠を挙げて説得できるというメリットがある。
同時に、当該社員に対して退職勧奨をする方針である旨を関係者間で共有し、理解を求めておこう。会社一丸となって対応することにより、退職勧奨が経営者個人の意向ではなく、会社としての総意であることを問題社員に対して示すことができるのだ。
(2)「退職パッケージ」を用意しておく
単に退職を要求するだけでは受け容れられることが困難でも、相応の補償を用意しておくことで交渉がスムースに進む傾向がある。具体的には、通常の退職金に加えて「特別退職金」や「慰労金」という名目で追加で支払う退職金(勤続年数×1ヵ月分の給与、最低でも半年分保証、など)、「有給休暇買取」、「指定退職日から半年間は在籍扱いされる権利」、「再就職支援サービスの紹介」などが挙げられる。
これらの支援が多ければ多いほど「労働者の自由な意思に基づいてなされたもの」と判断されやすくなる。
(3)面談当日は、異性のメンバーを1名同席させる
1対1の面談では、後々「言った/言わない」のトラブルや、ハラスメント的な発言や行動が「あった/なかった」の争いになるリスクがある。また相手側の感情的・衝動的な行動を抑制させるためにも、面談の場に第三者が存在することの効用は大きい。同席メンバーは特に発言する必要もなく、様子を観察しているだけでよい。
第三者の目があることで、「あまりみっともない行動はできない」という意識が生まれ、余計なトラブルを防止することができるのだ。
(4)絶対に「クビ」「解雇」との言葉は使わず、あくまで社員本人の意志で退職するという前提を通す
退職勧奨の目的は「問題社員が自主的に、自己都合退職すること」であり、間違っても「問題社員を会社都合でクビにすること」ではない。面談の場で一言でも「クビ」の二文字を出してしまうと、これまでの周到な準備が全て水の泡となってしまうので重々留意されたい。
具体的な言い方としては「あなたの社内でのポジションが無くなる」「社外でチャンスを探してみてはどうか」という前提であり、業績や態度が芳しくないという事実に気づかせ、本人から「辞めます」との言葉が出るまで多角的に刺激を与えるイメージで進めていくべきである。