軍事アナリストが指摘。ミャンマー国軍をそそのかした中国と習近平の影

 

そこで、いま、なぜというタイミングの問題ですが、コロナの問題が影を落としていることはいうまでもありません。

人権問題などで口を挟んでくるであろう米国は、バイデン政権発足直後でコロナへの対応に追われていることもあり、制裁をちらつかせるのが精一杯のところです。EU諸国と旧宗主国の英国もコロナ禍の中で同様の動きしかできていません。そんな中、軍部の動きに理解を示したり、沈黙を守ったりしているのは隣国の中国とタイです。反体制デモに揺れるタイはともかく、中国の姿勢は要注意です。

中国とミャンマーの間には国境問題はありませんし、中東からの原油はベンガル湾からミャンマーを横断するパイプラインで中国・雲南省へ輸送されています。スーチー女史だけでなく、中国は軍部との関係も維持してきました。昨年は習近平国家主席、今年は王毅外相が訪問、関係を深めています。

中国の立場で見れば、主要国がミャンマー情勢に介入できない現在はチャンスなのです。表面に出るかどうかはともかく、いち早く開発したワクチンを手にミャンマーに介入し、軍部とスーチー女史側の双方に中国主導による平和的解決を実行させることは不可能ではないでしょう。

南シナ海の実効支配が思うように任せない中国としては、ミャンマーという東南アジアでの橋頭堡を強化することは、思われているより戦略的に重要なのです。そんなところから、今回のクーデター劇の背後に「やるなら、いまでしょう」という中国のサジェスチョンがあったとする見方は、ますます強まりそうです。(小川和久)

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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