遅きに失して真実に迫れず。中国の思惑通りなWHO「武漢調査」

June,15,,2020,,Editorial,Use,Only,,3d,Cgi.,World,Health
 

武漢入りから2週間の隔離期間を経て始まったやはり2週間のWHOの調査が終了。調査団の会見は、武漢ウイルス研究所からのウイルス流出説を否定し、海鮮卸売市場も発生源ではないと、中国側の主張をなぞるだけでした。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さんは、今回の調査の重要な舞台の1つ「武漢ウイルス研究所」に関する新聞記事を昨年4月まで遡って検証。同研究所の実習生が感染した疑惑の説明はなく、調査中発せられた「多くの疑問」も明らかにされず、会見に同席した中国のガードの堅さを窺わせています。

新聞各紙は「武漢ウイルス研究所」でどんな記事を掲載してきたのか?

きょうは《毎日》から。WHOの調査団が会見を開き、武漢ウイルス研究所からのウイルス流出説を事実上否定しました。各紙書いていますが、「武漢ウイルス研究所」でどんな記事が掲載されてきたのか、毎度のことで申し訳ないですが、《東京》の検索機能で探してみました。

昨年の4月以降、8件にヒット。今日の《毎日》の記事を入れれば9件ということになります。まずは《毎日》4面記事の見出しと【セブンNEWS】第4項目の再掲から。

研究所起源は否定的
武漢調査終了 WHO会見

中国・武漢で新型コロナウイルスの起源について調べていた世界保健機関の調査団は、約2週間の調査を終えて会見。米国トランプ前政権が唱えていた武漢ウイルス研究所からのウイルス流出疑惑につき、「可能性は極めて低い」として今後の調査対象から外すことに。

会見は中国側と合同で行われ、WHOの専門家、ペンエンバレク氏は「実験室の事故によってウイルスが流出した可能性は極めて低い」と述べた。一方で、「武漢市以前の感染経路や人とウイルスを結びつける動物の絞り込みには至らなかった」とも。

最初に集団感染が確認された「華南海鮮卸売市場」は、初期のクラスターの1つではあるが、同時期に市場以外でも小規模な感染が起きていたとした。

●uttiiの眼

ウイルスの型などから、武漢ウイルス研究所も、華南海鮮卸売市場も「発生源」ではないということになった。またコウモリからどんな動物を経て人間に感染したのかについても結論は出なかった。要は、何も分からなかったということに近い。同席した中国側は、「中国以外で調査する必要性を強調し、「輸入冷凍食品などを介してウイルスが外国から流入した可能性」を指摘したというから、中国側はこの調査と会見を通じて実現しようとしていた目的を果たしたことになるのだろう。

それでも、この結果に対する責任の半分は中国側にあると言わざるを得ない。調査開始が大幅に遅れたことで、発生から1年後にようやく実現した今回調査の有効性には、最初から疑問が投げかけられていた。

print
いま読まれてます

  • 遅きに失して真実に迫れず。中国の思惑通りなWHO「武漢調査」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け