トヨタのライバルに?電気自動車の製造販売に参入した「出光」の勝算

 

出光が電気自動車(EV)を出す意義は何か?

ではなぜ、出光がEVの製造・販売を手がけるのでしょうか?現在でも、出光に限らず全国のガソリンスタンドは、ガソリンを給油する以外のサービスを提供しています。スタンドによっては、洗車機もあれば、タイヤやカー用品も販売しています。

物品のみでなく、サービスも充実しています。車検を取ることもできれば、修理もできますし、スタンドで保険に入ることもできます。また、ガソリンスタンドによっては、カーリースも行っていますし、シェアリングもやっています。さらに、中古車も販売しています。

お客様の立場からすれば、このように車に関することであれば、ガソリンスタンドに行けば、「買える」「直せる」「ガソリンも入れられる」「車検も」…といった具合に、何でも揃っているわけです。

なので、お客様も安心して購入し、その後のメンテナンスも近場のスタンドに任せるなどしていけば、色々と回らなくても、ワンストップで全て済んでしまうのが、ガソリンスタンドの便利さです。それがゆえに、企業によっては、ガソリンスタンドという名称を使わず、サービスステーションといった別な表現を使っているのです。

出光としても、EVを自社から出し購入してくれることによって、以降そのお客様がずっとファンでいてくれることになります。これまで積み上げてきた自動車についてのノウハウも、多く持っているでしょうから、今まで以上のサービスができるようになるでしょう。

出光の電気自動車(EV)発売開始に何を学べるのか?

このニュースをみると、最初は「ガソリンスタンドが電気自動車を売る?」という感覚になるかもしれませんが、こう考えてみると理にかなっています。まず、出光のこのEVの発売に関し考えるべきことは、「事業のコンセプト」の明確化、です。

出光は自社を「単にガソリンを売る場所」ではなく、「車についての問題をワンストップで解決できる場所」を、提供することに定義しています。これにより、カーディーラーには難しい、ユーザーに近い場所で、日常のサービスを提供することによる、大きな差別化ができます。

こうなると、自動車会社のライバルは、もはや自動車会社ではなくなってきています。競合は、常識の外から来る時代になりました。通常企業が売りたいものと、顧客が買いたいものは違います。この場合、企業は車を売りたいのですが、顧客は便利な移動が欲しいのです。顧客が買う車が「製品」、便利な移動が、「顧客が感じる価値」です。

製品で差別化をしようとすると、どうしても最後には価格競争になります。しかし、顧客価値で勝負すると、模倣も困難になり、陳腐化しにくいため、差別化が長続きするのです。そのあたりを見間違わないようにしなければいけない時代になっているのです。

image by: Shutterstock.com

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