「文章の構造化が苦手」ワープロ専用機時代から続く日本人の大問題

1187px-Toshiba_Rupo_JW05H_-_Front_side
 

1990年代初めはパソコンよりワープロ専用機の台数が多い会社の方が普通でした。その頃のメーカー各社が、ワープロ専用機の未来を語ったコメントがSNS上を賑わしたことに端を発し、さまざまな考察がなされています。メルマガ『Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~』著者で、Evernote活用術等の著書を多く持つ文筆家の倉下忠憲さんは、ガジェットは変わっても「神Excel」と呼ばれる手法や書式が受け継がれている会社があるように、使う側の問題は変わらずにあると指摘。効率的にデジタルツールを利用するには、文章の構造化について理解する必要があると論じています。

ワープロ専用機の未来と構造化文章

以下の記事を読みました。

「ワープロはいずれなくなるか?」への回答を今のわれわれは笑えるか あれから30年、コンピュータと文書の関係を考える – ITmedia NEWS

論点がさまざまに伸びているので若干とっかかりが難しいのですが、いくつか考えたことを書いてみます。

まず、記事中に出てくる「ワープロ専用機」は、もしかしたら若い方はご存知ないかもしれません。現代で言うところの、ハイエンドなノートパソコンくらいのサイズの、モノクロなディスプレイの、文章を作成するくらいしか機能がない、めちゃくちゃ重いガジェットが昔あったのです。

そのガジェットは、フロッピーデスクに文章を保存することもできましたし、なんと印刷機能がついていたので、そのままプリントアウトもできました。ようするに、デジタル式の日本語入力可能なタイプライターだと考えれば、そう間違ってはいないでしょう。

当時はパーソナルコンピューターがまだまだ高価であり、それに比べればワープロ専用機は「がんばれば買える」くらいの値段でした。その時代は、いわゆるホワイトワーカーが増えており、文章を書くことが仕事に組み込まれている人も増えていたので需要も高かったのでしょう。

私のように、趣味で文章を書きたい(小説ですね)人間にも、ワープロ専用機は憧れの存在でした。辞書もついているし、たくさん文字を書いても手首がいたくならないし、大量の原稿用紙を準備する必要もない。しかも、完成品をプリントアウトしてにんまりすることもできます。実に素晴らしい。

上の記事で取り上げられている各メーカーさんたちは、そうしたワープロ専用機がもっと普及している未来を「予想」していたようですが(ポジショントークというよりも、開発しているメーカーならば当然の考えでしょう)、結果的に、そのようなガジェットを見かけることはなくなりました。私も、高校生以来そうした端末を一切触っていません。悲しい現実です。

普及している端末

とは言えです。話はそんなところでは終わりません。まず、「文章をデジタル入力・保存する装置」として捉えれば、デスクトップパソコンとノートパソコンが(おそらく各メーカーの予想を遙かに超えて)普及している現実があります。ノートパソコンなら、ワープロ専用機よりも軽く、より多くの機能を担うことができます。技術の進歩です。

また、「文章しか入力できない装置」として捉えれば、我らが「ポメラ」という端末があります。ワープロ専用機のように印刷機能はありませんが、通信によって他の端末にデータを移すことが可能なので、現代的な状況では同じような役割をはたしていると言えるでしょう。

とは言え、ポメラが保存する文章はプレーンテキスト(.txt)です。いわゆるワープロが想定するリッチテキストではありません。この点の違いは、大きい場合もありますし、そうでない場合もあります。ややこしいのは、そうであっても、ポメラは見出しが使えるのです。つまり、構造化された文章を扱えます。上の記事の論点をかき乱すような存在です。

さらに言えば、iPhoneやiPadなどの「パソコンでないけれども、パソコンっぽいことができる」ガジェットも話をややこしくします。これらはプレーンテキストもリッチテキストも扱え、なんなら横書きだけでなく縦書きも可能なのです。つまり現代は、過去の状況と比較すると、ひどく混沌としていることがわかります。

print
いま読まれてます

  • 「文章の構造化が苦手」ワープロ専用機時代から続く日本人の大問題
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け