「文章の構造化が苦手」ワープロ専用機時代から続く日本人の大問題

 

悪い?

一体、そうした行為の何がいけないのでしょうか。「神Excel」だって、プリントアウトすればごく普通に使えるし、なんなら綺麗なレイアウトじゃないか、それでいいじゃん、という意見はあるでしょう。その意見こそが、「神Excel」的なものがなかなか無くならない理由でもあります。「今、役目を果たせるならば、細かいことは気にしない」。そんなコンセプトが鎮座しているのでしょう。

実際、同じものを使い続けたり、多少の修正で済む場合なら問題は起こりません。しかし、項目の再編成や、フォーマットの変更が発生したときには、ひどい事態が訪れます。何がどうなっているのかがわかりにくい上、セルの結合を一つひとつ解いていかないとレイアウトの変更もままなりません。おそらく、ゼロから作ったほうが早いでしょう。そのようにして、データの再利用性が著しく落ちます。

ワープロの場合でも同じです。「ちょっと文字サイズ小さいので、見出しのフォントは26にしよう」となったら、再びすべての行に対して変更作業を行わなければなりません。揚げ句の果て、「やっぱり大きすぎたから25に」なんて言われた日には発狂してしまうでしょう。

さらに、同様のスタイルが指定されている、しかし見出しではない文と見出し文の区別も当人しかできません(当人もいずれわからなくなるでしょう)。さらに、機械的に目次を抽出することもできず、コンテンツの解析も進みません。すべて「プリントアウトしたものが整ってさえいれば、それでよい」というマインドセットがもたらす被害です。

前例主義が機能しており、大きな変化が生じない時代であれば、「秘伝のたれをつぎ足す方式」でも被害はあまり起きなかったのかもしれませんが、さすがにもう現代でその考え方でやっていくのは無理でしょう。データの再利用、つまり自分以外の人間やコンピュータがその情報を使うことを想定することが大切で、そのために構造化は欠かせません。

そしてそれは、見た目以上の問題にも関わってきます。(メルマガ『Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~』より一部抜粋)

image by:Yoh-Plus, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons 

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1980年生まれ。関西在住。ブロガー&文筆業。コンビニアドバイザー。2010年8月『Evernote「超」仕事術』執筆。2011年2月『Evernote「超」知的生産術』執筆。2011年5月『Facebook×Twitterで実践するセルフブランディング』執筆。2011年9月『クラウド時代のハイブリッド手帳術』執筆。2012年3月『シゴタノ!手帳術』執筆。2012年6月『Evernoteとアナログノートによる ハイブリッド発想術』執筆。2013年3月『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』執筆。2013年12月『KDPではじめる セルフパブリッシング』執筆。2014年4月『BizArts』執筆。2014年5月『アリスの物語』執筆。2016年2月『ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由』執筆。

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