以前掲載の「止まらぬ不動産の『負動産』化。所有者不明の土地面積が九州超え」でもお伝えしたとおり、増え続ける一方の所有者が判明しない土地。その対策として今国会に、民法及び不動産登記法の改正案が提出されています。はたしてこの法改正で、事態の解決は図られるのでしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者の廣田信子さんが改正案のポイントを確認するとともに、マンション管理士としての目線から「管理組合運営にとっても朗報」と評価。さらに放置されている親の家があるという方に対して、早急な相続問題の話し合いを勧めています。
【関連】止まらぬ不動産の「負動産」化。所有者不明の土地面積が九州超え
相続登記義務化で何が変わるか
こんにちは!廣田信子です。
政府が、深刻化する所有者不明土地等の対策として、本国会に、民法、不動産登記法改正案を提出しています。
推計によると、既に九州の面積より広い410万ヘクタールの土地が、所有者不明の状態になっている…ということは、よく知られています。
不明になる原因の7割近くが「相続登記未了」3割強が「住所変更登記未了」です。このことは、管理組合にとっては、その住戸の区分所有者が不明ということで、
- 管理上の問題や管理費等の滞納が発生しても、どこに対応を求めればいいかわからない…
- 総会の議決権を行使してもらえない…
という深刻な事態になっていました。今回の改正は、管理組合運営にとっても朗報です。改正案の主なポイントを確認すると…
1.土地・建物の相続登記を義務化
- 相続開始から3年以内に、誰がどれだけ相続するかを登記
- 登記しなければ10万円以下の過料
2.相続人申請制度を新設
- 登記期限に間に合わない場合、相続人の氏名・住所等を登記(遺産分割協議が難航し、誰がどれだけ相続するか決まらない場合、相続人の氏名・住所等を法務局に届け出れば、法務省登記を行い、3年を経過しても罰則の対象にならない)
3.不動産所有者の住所、氏名変更登記を義務化
- 住所変更などがあったら2年以内に変更登記
- 登記しなければ5万円以下の過料
4.遺産分割協議の期間を設定
- 相続開始から10年を過ぎると原則法定相続割合で分ける(相続人が希望しなくても、法定相続分の土地・建物を持たされる可能性もあるということ)
5.土地所有権の国庫帰属制度を新設
- 国が一定の条件を満たす土地を引き取る(更地である、抵当権が設定されていない、境界争いがない土壌汚染がない等の条件)
- その場合、相続人は10年分の管理費を支払う
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