国民の命より聖火リレー優先。菅政権「政治プロパガンダ」の本末転倒

 

東京五輪に抗議している宮崎俊郎氏は、今回の聖火リレーについて「福島の復興が遅れているという現実を隠すための政治的偽装」だと批判しました。神戸大学の国際文化学の小笠原博毅教授は、長引く福島の深刻な問題から国民の目をそらすための「トーチウォッシュ(聖火による洗浄)」だと指摘しました。事実、原発事故でメルトダウンが発生した福島県を聖火リレーのスタート地点に選ぶという行為は、この聖火リレーという儀式の偽善性や害悪さ、バカバカしさを際立たせただけでなく、新型コロナ禍でも五輪へと突き進む日本という国の政治的問題点をも浮き彫りにしたのです。

最大の問題は、今週の聖火リレーから始まる夏季五輪が、パンデミックをさらに悪化させる可能性が高いという点です。日本のワクチン接種はほとんど進んでおらず、五輪開催には完全に間に合いません。日本の主催者は『外国人観客は許可しない』と発表しましたが、何千人もの選手、コーチ、ジャーナリストが日本国内に流入し、彼らは誰もワクチン接種を受ける必要がないのです。当然のことながら、大多数の日本人はこの状況を不安視しており、国民の80%は五輪の中止か再延期を望んでいます。

現在の日本には、東京五輪に対する懐疑論が蔓延しています。政府が3月21日に緊急事態宣言を解除した時、多くの専門家は、そのタイミングに疑念を持ちました。関西大学でスポーツ、ジェンダー、セクシュアリティーを研究している板谷聡子教授は「感染者数が増加しているにも関わらず非常事態宣言が3月21日に解除されたのは、間違いなく4日後にスタートを予定している聖火リレーが理由です」と指摘しました。

今回の東京五輪の聖火リレーは、パンデミックのさらなる悪化を抑えるために中止すべきですが、そもそも五輪の聖火リレーはナチスがプロパガンダのために考え出したものですから、パンデミックうんぬん以前に廃止すべきなのです。五輪史上初めて聖火リレーが行われたのは1936年のベルリン大会ですが、当初、アドルフ・ヒトラーは五輪に関して「フリーメーソンとユダヤ人による陰謀」として無関心でした。しかし、ナチスでプロパガンダを担当していたヨーゼフ・ゲッベルスが「五輪は世界が注目しているので、ナチスの思想を世界中に広める素晴らしい機会だ」とヒトラーに助言したのです。そして、ベルリン五輪大会組織委員会総裁に就任したヒトラーは、自分たちドイツ人こそが古代ギリシャ人から続くアーリア人の血統を受け継ぐ正当で優秀な民族であるということを世界に向けて主張する手段として、聖火リレーを考案し、プロパガンダに利用したのです。

※ 引用元の記事
Amid Covid fears, Tokyo Olympic Games’ torch relay kicks off. It should be extinguished.

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