【書評】病院から老人が消えた日。『介護保険制度』が抱える日本の闇

rear view of senior asian woman sitting in wheel chair in nusing home or hospital ward looking out of window
 

さらに、社会的入院というキーワードがあったそうだ。わたしはまったく知らないが。つまり、病院が要介護高齢者の終の棲家だったのだ。だから、人は病院で生まれて病院で死ぬといわれたのだろう。

特別養護老人ホームというのもあって、どちらかというと福祉的な観点、つまり貧乏人やワケありで入所が必要な要介護高齢者に対し、行政指導で入所させる施設だったようだ。

それが、2000年の介護保険制度の導入を機に、医療と介護は別であるとされた。常時医師の管理下にいなければならない重篤な高齢者以外は、介護施設に移動するように、あるいは自宅に戻されるようになった。

要は「病院からいなくなってくれればよい」ということだ。病院や医師を増やすことなく、医療処置の必要な患者を効率的に治療していくには、医療依存度の低い高齢者、医療を施しても長く生きられない高齢者を病院から追い出すことが、一番の早道であった。

医療費の削減、医療費の有効利用のため、でもあった。そんな事情の下で介護保険制度が生まれたのだから、そこには「治す」というキーワードはなかった。筆者も「あるがままを受け入れて対応しなさい」「要介護高齢者に寄り添いなさい」というキーワードの教育を受けた。

介護と医療はまったく違う。だから、介護制度と医療制度を包括的に考えることには、慎重であるべきだというのが筆者の持論である。

もはや老人はいらない!感嘆符付きでいわれてしまった老人のわたしだが、ああなったらこうしようなんて、先のことをなーんにも考えていない。♪ケ セラ セラ なるようになるさ。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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