ここにも中国の影。台湾で重大列車事故が繰り返し起こる真の原因

 

そんななか、政府は台湾鉄路の改革を宣言し、蔡総統は「台鉄の改革を断行します。我々を信じて下さい」と言っていますが、世論は冷めた目で見ています。なぜなら、今回の事故には「プユマ号事故」という伏線があったからです。メディアでも騒がれているのでご存知の方も多いでしょうが、事故の全容を以下、報道を引用する形で紹介します。

2018年10月に発生し、18人が死亡、216人が重軽傷を負った「普悠瑪列車(特急プユマ号)脱線事故」も、当該列車は定刻より15分遅れで運行しており、遅延ごとにペナルティーが科せられる運転士が自動列車防護装置(ATP)を自ら切断し、速度超過のまま運行して遅れを取り戻そうとして発生した。

台湾の鉄道事故は起こるべくして起こった…重大事故を繰り返す台湾国鉄という“病”

この事故車両は日本製であり、当時、台湾側は車輛の主契約企業である住友商事を相手取り損害賠償請求訴訟を起こしました。しかし、「運輸安全委は『車両自体に問題はない』と判断した。ただ、保守点検上の問題を指摘した上で、具体的な改善策を打ち出すよう住友商事側に提言した」

列車事故、「管理上の問題」と結論 「プユマ号」脱線―台湾・運輸安全委

日本側はとばっちりを食ったわけです。この事故の際、蔡英文総統は、やはり台湾鉄路の改革を宣言していました。しかし、さらに規模の大きな事故が起こってしまいました。それ以前も、台湾鉄路は様々な事故を起こしています。以下は報道を引用したものです。

台湾鉄路は21世紀に入って、ほぼ1年半に1件、重大事故を起こしている。

 

  • 2001年3月:貨物トラックと列車が衝突(死者3名)
  • 2001年7月:急行莒光号が鉄橋で脱線(負傷者43名)
  • 2002年7月:特急自強号がトレーラーと衝突(死者1名、負傷者16名)
  • 2003年10月:普通列車が観光バスと衝突(死者4名、負傷者37名)
  • 2005年6月:特急自強号が故意に損壊された線路で脱線(負傷者15名)
  • 2006年3月:特急自強号の直撃で保守作業員が轢死(死者5名)
  • 2007年6月:普通列車と電気機関車が衝突(死者5名、負傷者15名)
  • 2012年1月:特急タロコ号がダンプカーと衝突(死者1名、負傷者22名)
  • 2013年8月:特急自強号に土石流直撃(負傷者17名)
  • 2016年7月:台北松山駅の普通列車車内で爆発テロ(負傷者25名)
  • 2018年10月:特急プユマ号ATP切断脱線(死者18名、負傷者215名)
  • 2021年4月:特急タロコ号が作業用トラックと衝突(死者50名、負傷者218名)

台湾の鉄道事故は起こるべくして起こった…重大事故を繰り返す台湾国鉄という“病”

さらに、台湾鉄路は巨額の負債を負っていることも知られており、放漫経営が指摘されています。国営であることを盾に、地方活性化のためには赤字路線を廃線にするわけにはいかないなどと言い訳をしては、赤字経営に甘んじているわけです。

そもそも、台湾鉄路管理局とは、日本時代の鉄道を国民党が接収し、国民党の都合のいいように運営されてきたものです。民進党政権になった今でも、国民党の残党が権力を握り続けているもののひとつで、改革とは程遠い存在でした。

また、台湾高速鉄道ができたいま、台北と高雄間の長距離輸送よりも、台北と台東などの地方都市を結ぶ路線としての存在となっていました。つまり、旧態依然としたまま今に至るわけです。

台鉄が取り上げられるとしたら、レトロブームで駅弁や車両が紹介される程度。また、主に日本との姉妹駅や姉妹路線の契約を結んだり、事業提携で弁当や鉄道模型を販売したりしていますが、日本時代の遺産に頼っている面は大きいです。赤字経営のため人員を減らす一方で、地方都市への輸送の需要は高まり、細かいダイヤを運行しなければならないといった状況にありました。

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