汚染水「放出ありき」の非道。政府と東電の“密約”が炙り出す大嘘

 

しかし、もっと許されないのが、福島第1原発の処理水の海洋放出なのです。何故なら、これまで政府が説明して来た「トリチウムを含む処理水」という大前提が大嘘だからです。福島第1原発に125万トン以上も溜まっている処理水は、原子炉から溶け落ちた核燃料に触れて高濃度放射能汚染水となってしまった地下水を処理したものです。

処理の手順は、初めにセシウム134と137、ストロンチウム90を分離し、その後、当時の安倍晋三首相が「汚染水処理の切り札」として鳴り物入り導入した多核種除去装置「ALPS(アルプス)」によって、残った放射性核種を62種類、基準値以下になるまで除去するという方法です。そして、この「ALPS」でも分離できないトリチウムだけが残ってしまったものが、大量に溜まり続けている処理水だというのが、これまでの政府と東電の説明です。

しかし、2018年8月、メディアのスクープによって、信じられない事実が発覚したのです。当時、合計で約89万トンまで溜まっていた処理水のうち、なんと84%に当たる約75万トンが安全基準を満たしていなかったことが分かったのです。それも、基準値を大幅に超えたストロンチウム90、ヨウ素129、ルテニウム106、テクネチウム99などの放射性核種が次々と検出されたのです。

これらの中で特に危険なストロンチウム90は、最も含有量の高い貯水タンクのものは、1リットル当たり約60万ベクレル、なんと基準値の約2万倍でした。他の放射性核種も、基準値の数十倍から数百倍のものが数多く検出されました。皆さん、果たしてこれが「処理水」でしょうか?これは完全に「放射能汚染水」ではないでしょうか?それも「高濃度」の。毎度のことながら「やってる感」と「やってるふり」、これが東京電力クオリティーであり、安倍政権クオリティーなのです。

そして、さらに呆れるのが、この年の経済産業省の対応です。このスクープの直前、経産省は「ALPS」の処理水を海洋放出するための公聴会を開いたのですが、そこで配布された処理水に関する資料によると、トリチウム以外の核種は、すべて基準値以下か未検出と記されていました。つまり、経産省は実際の計測データを配布して「海洋放出しても問題ない」とアピールしたわけです。

しかし、その直後、このスクープによって、全体の84%に当たる処理水に基準値を超えた複数の核種が含まれていたことが発覚したのです。これはおかしいと、この公聴会で配布された処理水に関する資料を調べてみると、なんと4年も前の2014年のデータが使われていたのです。そして、その後の東電の処理水の内部データを調べてみると、2015年から2017年に掛けて、トリチウム以外の核種が基準値を大幅に超えているものが散見されたのです。

つまり、東電も経産省も安倍政権も、「ALPS」の処理水の多くに基準値を大幅に超える危険な放射性核種が複数含まれていることを知っていながら、その事実を隠蔽していたということになります。そして、隠蔽しただけでなく、海洋放出を強行するために、わざわざ4年も前の都合の良いデータを探して配布し、国民を騙そうとしたのです。ちなみに、この時の経産大臣は、安倍政権のゲッベルスこと世耕弘成でした。

もしも、このスクープがなければ、安倍政権は国民を騙して海洋放出を正当化し、基準値の約2万倍もの猛毒ストロンチウム90が含まれた殺人レベルの「高濃度放射能汚染水」を、すでに大平洋へと廃棄していたのです。これは周辺海域の自然環境と日本の漁業を壊滅させるだけでなく、日本も批准している「国連海洋法条約」に違反する悪魔の所業です。

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