汚染水「放出ありき」の非道。政府と東電の“密約”が炙り出す大嘘

 

2013年9月、当時の安倍晋三首相は、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催されたIOC総会で「原発事故は完全にコントロールしている」「放射能汚染水は完全にブロックしている」と述べ、東京に五輪を招致しました。しかし、実際には、大雨によって未処理の放射能汚染水の水位が上がり、1リットル当たり50万ベクレルを超えるストロンチウム90などが含まれた大量の汚染水が、堰を超えて流出するという事故が相次いでいました。

こうした状況を受け、安倍首相は「汚染水問題は、今後は東電に丸投げせず、この私が責任者となり、政府が前面に立ち、完全に解決すると国民の皆さまにお約束いたします」と宣言しました。しかし、それ以降、安倍首相は一度も対策会議を開かず、5年間に渡り視察すら行ないませんでした。ようするに、毎度おなじみの「無責任に言い散らかしただけ」だったのです。そして、その結果が、今回の菅首相による「2年後の海洋放出ありき」という強行策なのです。

現在の東電や政府は、海洋放出する場合には二次処理を行ない、残留している複数の核種をすべて基準値以下にした上で、水で希釈してから放出するので問題ないと言っていますが、こんな言葉は信用できませんし、そもそも不可能なのです。

現在、125万トン以上ある処理水の約70%は基準値を超えており、基準値の100倍を超えるものも10万トン以上も存在します。「ALPS」の処理能力は1日500トン、3基あるので1日1500トンですが、100万トン以上の処理水を再処理するためには、毎日増加し続ける新たな汚染水の処理と並行して行なった場合、3基をフル稼働しても3年以上は掛かってしまいます。しかし、これは「ALPS」の処理能力が完璧だと仮定しての話であって、汚染水対策の切り札であるはずの「ALPS」は、不完全な欠陥品なのです。

福島第1原発で汚染水を処理している「ALPS」は3基ですが、最初の「ALPS」は米ピュロライト社の技術を使用した試験装置、言わばプロトタイプです。何の実績もなく、福島第1原発がデビュー戦でした。実際に試験運転してみると、一定の効果は見られるものの実用には耐えられないため、導入は見送られました。そして、これを東芝の技術で何とか使えるように改良した1基目、さらに改良した2基目が、2013年に導入されました。さらには、GE日立が性能をアップさせた新型も2014年に導入されました。

しかし、この3基もすべて、所詮は何の実績もないプロトタイプなのです。福島第1原発での「実戦」という名の試験運転では、ストロンチウム90、コバルト60、ヨウ素129、炭素14などの核種を十分に分離することができず、基準以下にすることはできませんでした。それなのに東電は、この3基の「ALPS」による処理水の大半で、すべての核種が「ND(検出されず)」になったと嘘の報告を続けて来たのです。

その結果が、先ほど紹介した、約89万トンの処理水のうち84%に当たる約75万トンが基準値超だったという2018年のスクープなのです。もしも、このスクープがなければ、東電は今も嘘の報告を続けていたでしょう。

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