コロナで加速したマルイ「売らない店」戦略。斬新な発想の狙いは?

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コロナ禍により客足が遠のいているのは飲食店ばかりではなく、都心部の百貨店などの大規模店舗も訪れる客が減り、大きな打撃を受けています。そうした中、ファッションビルを展開するマルイが、以前から取り組んでいたDtoC事業者をテナントとして迎える戦略を加速させていると話題です。メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』発行人の理央周さんは、マルイの「売らない店」という発想がなぜ生まれたのか、その背景と狙いを詳しく解説し、ビジネスのヒントを伝えています。

マルイは“売らない店”で何を売るのか?新しいビジネスモデルの発想とデータ活用の重要性

イオンも、先日発表された2021年2月期の決算で、過去最大の最終損益を出したように、新型コロナウイルスの拡大以降、リアル店舗を持つ小売業は、人の移動の減少にともなって、集客に苦労しています。

そんな中、マルイグループが、自社の店舗を、「売らない店」にしようとしています。今号では、その目論見、背景にある理由について、深掘りをしていきます。あなたの仕事のヒントにしてください。

アパレル業界の現状とビジネスモデル

マルイは、一部店舗に、インターネットでアパレルを販売する通販会社を、自店舗にテナントとして入ってもらう、という方針をうちだしているのです。

それも、今までによくある消費者向けに、製品を製造するアパレルメーカー、いわゆるBtoC(ビジネストゥコンシューマー)の企業ではなく、自分たちで製品を企画し、広告や販売促進なども代理店さんを通さず、SNSなどを使って自分たちで直接消費者に届ける、DtoC(ダイレクトトゥーコンシューマー)と呼ばれる小規模事業者に、テナントとして入ってもらう、という形です。

DtoCというビジネスモデルについて、ここで少し復習をするために、ユニクロや三陽商会と比較してみます。ユニクロは、自社で商品を開発企画して、製造もして、自社と広告代理店さんとで考えた、広告や販売促進を、テレビやラジオ、インターネットなどで行います。そして商品を、自社の店舗やインターネットで販売します。

ユニクロはこのように製造から販売まで一気通貫で行う、SPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)というビジネスモデルです。米国GAPが、自社の仕組みをSPAと名付けました。最大の特徴は、商品のサプライチェーンの、中間業者を省いての、効率化にあります。

SPAモデルを取る企業が出てくるまでは、三陽商会のように商品の製造をして広告をうち、百貨店などの小売業者を通して、そこで消費者に販売していました。いずれのケースも、企業としてビジネスから、消費者に向けて販売するのがBtoCと呼ばれる業態です。

一方で、先ほどのDtoC(ダイレクトトゥーコンシューマー)と呼ばれる小規模事業者は、自社で商品を企画し製造しますが、インターネット、とくにインスタグラムなどのSNSを通して、商品を宣伝します。売る場合も、小売店を通さずにインターネット上で、そのまま買うことができるように仕立てていて、買ってもらったお客様に直接ダイレクトに届けるので、DtoCと呼ばれます。

このように、商品の流通経路が今までと違うことに加えて、お客様にブランド名を覚えてもらったり、良さをしってもらったりするための、コミュニケーションの取り方が、これまでのBtoCの業態とは全く違っています。

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