コロナで加速したマルイ「売らない店」戦略。斬新な発想の狙いは?

 

マルイはなぜ売らない店にDtoC業者を入れるのか?

このようにDtoCのビジネスモデルにおいては、全てをインターネット上で完結させるので合理的なのですが、お客様としては一度も商品に触れることなく、買うということになります。

このDtoCを通して買う比率が、特に若い層で高まってきたこともあり、マルイグループとしては、DtoCブランドにテナントに入ってもらって、その場で売る、というよりも、商品を知ってもらい、触ることや体験もできて、さらに、消費者データを取ることもできる場を提供する、という狙いがあります。

有楽町のマルイでは、SNSやネット通販を通じて、顧客と直接つながるD2Cの人気ブランドである、オーダースーツを手掛ける、「ファブリックトウキョウ」が入居しています。日経新聞によると、「ファブリックトウキョウ」はこの店を、売り上げを上げるための努力よりも、採寸をしたり、お客様の声を拾える場所として、活用をしています。

たとえば、店員さんがお客様と話している中で、「自転車通勤でリュックを背負った時に肩の摩耗が気になる」という声をもとに、摩耗に強い生地を採用したジャケットの、品ぞろえを充実させた、といった具合です。

また、新宿マルイの1階に入居する、最新家電が体験できる施設「b8ta(ベータ)」では、天井に据え付けた人工知能(AI)カメラが、来店したお客様の行動を追って、商品の前に5秒以上滞在した人の数、スタッフが商品デモを行った回数、デモ体験から販売に至った割合などを記録します。そして、こうしたデータを出品企業に還元して、商品開発に役立てるということです。

新常態の中でどうやって顧客問題を解決するのか?

新型コロナウイルスが広まった中で、消費者が移動することが制限され、それにともなって、商品の探し方と買い方が、大きく変わりました。もちろん、一番増えたのはインターネットで探して、そのまま買う、という流れですが、インターネット通販での弱点は、触ったり試着したりという、リアルの体験ができないことです。そこを補うために、マルイグループは、今回「消費者が体験できる場所」を提供していく、ということにしたのです。

マルイ側にもテナントが減少した中で、ここが成功すれば大きなメリットになります。記事にもあるように、来店したお客様に対して売り込みをすることは大事ですが、度が過ぎると、お客様の心は引いてしまいます。なので、マルイグループとしても、売ると言う目標を設定せず、「ネットで得られる情報とは異なるお客様データ」を集めて、店舗や自社でできることは何か、を突き詰めていくのでしょう。

この数値目標を設定しない、という決定も、経営陣の英断です。その背景には、やはり大手プラットフォーマーが握っている、「顧客データ」を自社が取れることの、重要性を認識しているからです。こうやってみてみると、ビジネスとしてやれることや、打ち手もまだまだあるものだ、と感じます。

image by:yu_photo / Shutterstock.com

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