今の日本は「衰退途上国」。在米作家が断言した根拠と4つの大問題

 

3番目は、周辺国や関係国との間で何が起きるのかという問題です。まず、経済衰退に伴って、日本経済の中には「まだまだ競争力の有る部分」と「生命維持だけになっている部分」が分化してきているわけです。前者に関しては、かなり他国の資本に買われてしまっているのは事実です。

例えばシャープは、再生を果たして上場維持をしていますから、成功しているように見えます。また、今回の「マスク製造」など時代の要請に機敏に反応していることから、日本企業というイメージが残っています。ですが、実際は台湾の鴻海グループの子会社です。そして、鴻海は米アップルの製造下請けです。

そのアップルは、日本の横浜市にある松下通信跡地にYTCという研究施設を稼働させています。この研究施設誘致に関しては、当時の安倍総理などは積極的だったようですが、何のことはありません。日本に残存する光学系、あるいは素材系のノウハウを、アップルとして見極めて札ビラ切って買い集めるための拠点なのです。

それによって、日本国内で雇用維持がされるとか、日本のエンジニアがアップルの世界基準の給料がもらえるようになるかもしれません。ですが、結果的に、AMDのチップがアップルのチップになったように、多くのパーツが「内製化」されていくことになります。結果的には、量産拠点は世界の中で最適な場所に持って行かれる中では、日本のGDPは削られる一方です。

日本は故意に円安誘導を続けていますが、これは日本企業のドルベースでの価値を低めてしまいます。ですから、買収されるリスクは高くなっているのですが、その割には、例えば中国の資本が日本企業を乗っ取るケースは少ないように思われます。これは、「買う価値のある内容」が限られてきているということと理解ができます。

一方で、日本はこれだけ教育水準の高い国でありながら、観光立国などという絶望的な国策を推進していますが、この政策がコロナ禍による中断中ではあるものの、基本的には成功しています。デフレの反映した価格に円安効果もあり、価格競争力がある一方で、日本のカルチャーや生活様式へのエキゾチックなものとしての憧れというのは臨界点を超えて拡大の一途だからです。

日中の経済関係ということでは、最先端のモノに関する大規模で高効率な製造拠点としては日本企業は中国を大いに利用しつつ、徐々にノウハウを奪われても仕方がないという態度を取っています。日本国内にはリスク選好マネーはなく、中付加価値製造業の厳しい仕事を割り切って働く優秀な労働力もない中では仕方がないのでしょう。

この他には、日本は衰退しつつあるとは言え、まだまだ相対的には先進国であることから、海外の安い労働力の活用は続けています。こちらは、支払い能力が下がる中で、かなり過酷な条件となっており、中には非人道的なケースも見られます。実際は、ある臨界点を超えて日本が貧しくなり、アジア全体における賃金メリットが消滅すれば、こうした外国人労働者は来なくなり、反対に日本人が出稼ぎに出るようになるわけですが、その臨界点に至るにはまだ時間があると考えられます。

ということで、日本経済が緩やかな衰退を続ける中で、混乱を生ずるあまりに、周辺国に対して「迷惑をかける」という局面は今のところは、あまり起きていません。これは評価しても良いと思います。

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