菅首相の新型コロナウイルス対策は、ことごとく見通しが甘い。経済との両立をめざすあまり、希望的観測が幅を利かせ、対策の逐次投入で後手にまわった。専門家の意見に耳を傾けない姿勢も目立っている。
新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は緊急事態宣言について、感染状況が「ステージ2」(感染漸増)相当にまで落ち着いた段階で解除することが望ましいと強調するが、菅首相は「ステージ4」(感染爆発)の脱却が解除基準になると言って譲らない。
尾身会長が5月7日の衆院厚労委員会で語ったところによると、緊急事態宣言に福岡、愛知両県とともに追加すべきだと、メンバーの多くが、ある県の名前をあげたが、却下された。おそらく医療がひっ迫している北海道のことだろう。
尾身会長は政府の却下説明をひとまず了承したものの、「多くのメンバーが追加した方がいいと言ったことは議事録に残してもらった」と言う。
政治家として、菅首相には「総合的判断」が求められることもあるだろう。しかし、玉虫色の政策では解決につながらない。ここは、医療の論理を優先するべきところではないか。コロナを抑え込むことが、経済の復活につながる。
反対意見はあろうが、補償をしっかりし、心底からの言葉で国民を説得するべきだ。もちろん、その役割と責任は菅首相にある。
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