精巣ガンの危険も。医師が男児の「プライベートゾーン」検診を勧める訳

2021.05.13
by 吉里時雄
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国内では何かとタブー視されがちな、水着をつけて隠れる部分、いわゆる「プライベートゾーン」ですが、それゆえ見逃されがちであり、かつ適切な治療が行われなければ重篤化する可能性のある病気が存在することをご存知でしょうか。そんな男児のプライベートゾーンに発生する2つの症状について特別寄稿してくださったのは、沖縄市の吉里小児クリニック院長・吉里時雄先生。吉里先生は今回、腸の壊死や不妊症、精巣癌につながりかねないそれらの病気について詳しく解説するとともに、早期発見法についてもレクチャーし、学校検診の必須項目にするよう提言しています。

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小児科医師吉里 時雄よしざとときお
昭和56年群馬大学医学部卒業、3年間沖縄県立中部病院で研修、その後2年間指導医として勤務。更に2年間、米国ミネソタ州メイヨークリニックに留学。その後7年間、中部病院に勤務後、平成12(2000)年に沖縄で吉里小児クリニックを開業し現在に至る。

プライベートゾーン健診のすすめ

皆さん「プライベートゾーン」という言葉を聞いた事がありますか?これは水着をつけた時に隠れる体の部位の事です。即ち、胸部と下腹部・外陰部の事です。他人に見られると恥ずかしい部位なので、そこに異常があっても医療機関へ受診することに抵抗を感じる人々は多いと思います。ここで、男児の外陰部の重篤になりうる病気を2つ紹介します。

1つ目が“ソケイヘルニア”です。これは大腿のつけ根の部分から、腸の一部がとび出る病気です。大人にも見られますが、小児の特徴は嵌頓すなわち、腸の一部が腹部にもどらなくなって腸に血流が途絶える状態になり、腸が壊死する事態になりやすいことです。緊急事態になりやすい為、無症状のときに手術するのが原則です。

2つ目は“停留精巣”です。これは男児の精巣が陰のうと呼ばれる袋の部分に降りていない状態を言います。放置すると2つの重大なことが起こります。まず1つは精子が充分に作れず、不妊の原因になり得ます。現代における不妊症の3割は男性に原因があると言われ、その原因の1つに当たるかもしれません。そして、もう1つは癌化です。精巣癌は家族性のものと、停留精巣に基づくもの等がある様で10万人に1人の割合で発症すると言われ、停留精巣の精巣癌の発症リスクがそうでない男性に比べて、3~14倍も高くなると言われています。

私は約17年間、県立中部病院の指導医として勤務、その後開業し、中部地区の小学校の校医として、健診に携わってきました。指導医としての信念もあり、健診は男児の外陰部も診察しソケイヘルニアや停留精巣等も無症状のときに早期に発見し、泌尿器科へ紹介した上で手術を受けた男児が多数おりました。腸の壊死や不妊症、そして精巣癌の予防につながったのです。

ところで、乳幼児健診マニュアルには外陰部の診察も含まれています。しかし、学校健診には含まれていません。これは重大な不備です。なぜならば、ヘルニアは診察時には腹部内に入っている時は診察しても発見できませんので、児童生徒も外陰部の診察が必要と思われます。乳幼児健診で、正常と診断されている児の中にも、その後に停留精巣が見つかり、手術になったケースや手術待ちの児もみつかることもあります。乳幼児期だけでなく、学童期でのダブルチェックも大切です。

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