5月19日におこなわれたNTTドコモの「新サービス・新商品発表会」で、NTTドコモが初となる家庭用据え置きWi-Fiルーターに参入することが発表されました。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、今回の発表を受けて「製品化までの道のりは厳しかったのではないか」と、同社の親会社であるNTTの東西が市場で幅をきかせている「固定インターネット市場」参入までの苦労を案じながら、他の大手2社にとって脅威となる可能性についても分析しています。
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NTT完全子会社のドコモが固定ネット市場に殴り込み。NTTドコモが家庭向け据え置きWi-Fiルーターを発売
NTTドコモは2021年5月19日に「2021夏 新サービス・新商品発表会」を開催した。
注目はなんと言っても、NTTドコモ初となる家庭用据え置きWi-Fiルーター「home 5G」だ。
5Gはもちろん4Gも使い放題。月額利用料金は4950円となる。固定回線という位置づけにより、セット割引でドコモ回線が1回線あたり1100円割り引かれるというのも魅力だ。
年初に井伊基之NTTドコモ社長にインタビューした際「SoftBank Airみたいなものをドコモでもやりたい」と話しており、まさに井伊社長の狙い通りの製品ができあがったといえるだろう。
この手の製品は、これまでもNTTドコモ社内で企画としては上がったものの製品化までこぎ着けるのは難しかったのではないか。
どんなにソフトバンクがSoftBank Airで契約者数を伸ばしていたとしても、NTTドコモが、NTT東西の主戦場である固定インターネット市場に参入するというのは、あまりに非現実的だ。NTT持ち株やNTT東西を逆なでしないよう配慮がされていた可能性が極めて高い。
しかし、澤田純社長の右腕であり、NTT出身の井伊基之社長が「やりたい」といえば、NTTドコモでもこのような商品が登場してくるのであろう。
NTTによるNTTドコモの完全子会社化の成果が、まさに「home 5G」に詰まっているといえそうだ。
一方、ソフトバンクやKDDIにとってみれば、NTTドコモが大手を振って固定インターネット市場に参入してくるのは脅威でしかない。
home 5Gで固定回線と同様に使い放題的に使えるとなるとネットワークの混雑などが気になるが、井伊基之社長は「混み合ったときにネットワーク側で帯域制御をする仕組みを入れている。ベストエフォートということで、混み合ったときには遅くなるかもしれないが、きめ細かく制御して速度を維持できるよう、しっかり準備をしている」としている。
住宅地でhome 5Gの需要が高まることを予想して、住宅地でのネットワークインフラを強化するという計画はいまのところないようだ。しかし、将来的にhome 5Gが主流になっていくようなことがあれば、「住宅地のNTT電柱に5G基地局を設置」なんてことも増えてくるかも知れない。
その5G基地局がシェアリングで4社で共有できれば何の問題もないが、NTTドコモが独占して使えるようになると、結構、話はややこしくなるかも知れない。
NTTによるNTTドコモ完全子会社については、KDDIやソフトバンクから意見書が出されるなど、まだまだ波風が立ちそうな雰囲気もある。 home 5Gが国内の通信市場にどんなインパクトを与えるのか。その影響次第では、新たな波紋も巻き起こしそうだ。
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image by: TK Kurikawa / Shutterstock.com