2点目は、この非正規の扱いもそうですが、実際に多くの人と対面で仕事をしなくてはならない「エッセンシャルワーカー」が優先されていないという問題があります。
まず非正規の人は、どうして多くの場合にテレワークを認めていないのかというと、その多くが対人の対面業務だということがあり、また、「職場に通勤して時間拘束を受ける不自由」を受け入れないと企業が金を払わないという非人間的な制度に縛られているからです。
その制度を批判すると長くなるので、今回は止めますが、とにかく非正規の人が対人業務になるというのは宿命的なものがあるわけです。加えて、外食、宿泊、運輸、教育などのエッセンシャルワーカーの人々も、どう考えても優先されるべきです。それが、結果的に大企業の正社員優先ということになるのは全くおかしいと思います。
3点目は、これで大企業の事務仕事を、テレワーク化することで生産性を高めるという業務改革が、中途でウヤムヤになるという懸念です。
紙とハンコと日本語とに縛られているだけでなく、対面でしかマネジメントできないダメ管理職に縛られているという、日本の事務仕事の「四重苦」の解消が、これで一旦頓挫することになれば、生産性の向上など夢のまた夢ということになります。
ちなみに、最近よく耳にするのが、若手社員からの「テレワークだと生産性が上がらない」という声です。どういうことかというと「業務を進めていて、簡単な質問を対面でサクッとできないので、そこで仕事が停滞する」ということなのだそうです。
こんな問題は、セキュリティのレベルの確保できた法人向けチャット環境を整備して、先輩社員にはブツブツ言わずに華麗に即レスでアドバイスや情報提供をさせるようなマネジメントをすれば済む話です。結局は「その上」のマネジメントの間抜けさ加減という話だと思います。
しかし、職域接種が進むことで、対面が無制限にOKだということになり、テレワークが中止になれば、そうした改革のチャンスもまた消えてしまうでしょう。日本経済の衰退は、またまた加速しそうです。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋)
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