大人の心理学。富田隆教授がSMで紐解く「恐怖による支配」の構造

 

【創造性の欠如】

恐怖によって支配された人々は、一所懸命に学習し、必死に働くわけですが、こうした形で鍛え上げられた能力には、致命的な欠陥があります。それは「創造性」の欠如です。

負の強化による学習や労働は「自由」とは無縁です。確かに負の強化による教育は、決まり切った、システマティックな能力を身に付けるのには適しているかもしれません。少ない時間で効率良く、紋切型の能力を身に付けることはできるでしょう。しかし、正解の無い、全く新しい何かを生み出すための能力は、「正の強化」を中心に据えた「自由」な学習環境でしか育ちません。

AI(人工知能)のパフォーマンスが飛躍的に向上した現代においては、奴隷労働的な仕事は次々にロボットやAIに取って代わられつつあります。給料がやたら高いかゼロかにかかわりなく、奴隷労働の従事者は失業します。これからの時代、人間が担当しなければならないのは、「創造的な分野」や「芸術」、そして、「遊び」や「趣味」と区別できないような領域の仕事なのです。

そしてもうひとつ、恐怖による支配が抱える弱点があります。

それは、負の強化を維持するためには、常に恐怖を現実のものとし続ける努力やエネルギー?が必要になるのです。もし、皆に、恐怖の対象が絵空事であることが分ってしまえば、誰も回避行動や逃避行動をする必要はなくなるからです。要するに、「なめられたら終わり」ということです。

たとえば、老朽化し爆発しないことが分かっている核弾頭がいくら並んでいても、それは抑止力にはなりません。米国をはじめとする核保有国は毎年かなりの額の税金をこうした核弾頭のメインテナンスに使っています。それは、核弾頭が「現実の恐怖」であることを維持するための費用です。

恐怖の源(みなもと)が実は「張り子のトラ」であることがバレてしまえば、その「恐怖」を裏付けとしてこれまで維持してきた支配は終わってしまいます。

所詮(しょせん)、倫理的な摂理から外れた事柄は、一見、どんなに強力に見えても、どこかに致命的な欠陥を隠しているものです。「恐怖による支配」もまた仮初(かりそめ)のものであり、永くは続かないのです。本当に価値のあるものは、自由の中から生まれて来ます。

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