【苦痛による調教】
ですから、「飴」同様、「鞭(苦痛、嫌悪刺激)」もまた、それをストップしたり避けさせることにより、ある行動を「強化」し促進する力を備えています。これを心理学では「負の強化(negative reinforcement)」と呼んでいます。苦痛を取り去る(マイナスする)ことにより「良い結果」を生み出すので「ネガティブな強化」、負の強化と呼ぶわけです。
これと区別するために、飴を与える普通の強化のことを「正の強化(positive reinforcement)」などと呼ぶこともありますが、「正」であれ「負」であれ、「強化」には、目的の行動を促進し、生じやすくするという同じ力があります。
強盗の例では、実際には銃撃を事前に回避したわけで、被害者は苦痛を受けてはいませんが、これとは少し違って、現実に苦痛を受けてしまう場合もあります。既に、苦痛を受け続けていて、何かをすることでその苦痛が停止すれば、その行動は強化され、その行動が生じる確率は高くなります。
たとえば、SMプレイを例に考えてみましょう(少々大人向けの例に過ぎるのですが、分かりやすいので)。Mが進んでフェラチオをするように、Sがこれを「調教」するにはどうしたらよいのか?もちろんこれはSMの世界の話ですから、フェラチオをしたらご褒美にクンニリングスで逝かせてあげるといった「正の強化」は使えないと仮定してください。
使うのは当然、「負の強化」です。基本的には、最初にまず何らかの苦痛を与えておいて、Mがしぶしぶにでもフェラチオをしたら、苦痛を止めてやる(あるいは回避できるようにする)ということになります。具体的には、まずSは鞭でMを叩き続けて、Mが苦痛に耐えかね、指示に従ってフェラチオをしたら、ご褒美に鞭で打つことを止める。こうした、「苦痛~目標行動~苦痛の停止」というサイクルを何周も回転させて、目標行動を強化します。これは、「鞭で打つぞ」と脅して、フェラチオをしたら打たない、という「回避」を強化することでも同様の結果を得られます。すると、最初は仕方なくいやいやフェラチオをしていたMが、次第に「進んで」「喜んで」自分からフェラチオをするようになるのです。
このように、鞭を用いた「負の強化」によっても、人の「自発的行動」を促進したり、生じやすくしたり、強めたりすることができます。
笑って読むうちに、いつの間にか心理学的な知恵もついてくる、富田隆さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ